『剣遊記 邂逅編T』 第一章 出逢い……そして永遠に。 (15) あまりにも気まずい空気やったんで、おれは早々に食堂兼酒屋ばあとにしたっちゃ⛸
まあ、彼女が善意でおれば助けてくれたんは、ようわかるっちゃ☝ やけど、彼女に戦士の論理ば説くっちゅうのが無理なことも、同様にようわかると☁
そんな感じで、なんとなく顔ば会わせづらいはずやった☂ それでも彼女ときたら、今もしっかりとおれのあとについとった⛍
でも、店ば出てから一回も、おれと口ば聞こうとはせんかった✄ おれば嫌いになったらなったで、さっさとおれから離れて行ってしまえばよかっちゃろうに☹
戦士と魔術師✍ あるいはもっと男と女の考え方の差に、理解ができん壁みたいなんがあるかもしれんとやけど、今のおれにはほんなこつ不可解なこととしか思えんかったっちゃ✋ そこで、返事がないのば覚悟のうえで、おれは彼女に声ばかけてみたっちゃね✐✑
「おい……☁」
「…………☃」
思うちょったとおりの無言の行☢ この際やけ、勝手に独り言ばつぶやかせてもらうっちゃね☠
「恩返しって、いったいなんやったんやろっかねぇ? 魔術ば使えることはようわかったとやけど、この先どげんするつもりやろっかねぇ〜〜♣」
我ながら自己嫌悪ばしたくなるような、嫌味たっぷりで当て付けがましい独り言やった☠ でもこれで、彼女がおれに愛想ば尽かし、自分の家にでも帰ってくれたら――そげな気持ちも含めちょったとやけど――言うてしもうたあとで、おれの胸になんか、すごい後悔の気持ちが込み上がってしもうたと☃
いったい、なんでやろっか?
やけんおれは、つい不安な気になって、うしろにおる魔術師の彼女に振り返ってみたっちゃね☞ するとおれと目が合{お}うたとたん、彼女はプイッと、顔ば右に背けてくれたったい♨
「うわっち!」
やっぱ、可愛くなかやねぇ☠ やけど腹が立つのと同時に、なんとも言えんほっとした気持ちになる理由が、自分自身でありながらおれには、どげん考えたかてわからんかったと☹☹
(C)2014 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |