前のページへ     トップに戻る     次のページへ


『剣遊記 邂逅編T』

第一章  出逢い……そして永遠に。

     (14)

「目ぇ覚めたぁ?」

 

 今やすっかり、耳にタコの声がしたと♐

 

「うわっち!」

 

 たったそんだけのことで、おれの意識は完全に覚醒☀ すぐベッドから半身やけど、起き上がってしもうたばい☆

 

 無論おれの目の前には、すでに馴染みになっちょる、魔術師の彼女がおったと☞ すぐに開口一番、おれの目覚めば喜んでくれたっちゃね★

 

「良かったっちゃねぇ♡ もしかして死んだっち思うてしもうたとよぉ♣♠」

 

 などと実に縁起のようないことを言うてくれながらも、彼女は心底からうれしそうな顔ばして、おれが寝ちょうベッドに身を寄せてくれたと☕

 

 どげな成り行きでおれがベッドに寝かされちょるんか☙ これがいっちょも思い出せんかった☹ けどおれと彼女はふたりだけで、同じひとつの部屋に同居しちょうわけ⚢ これはそれなりに、心臓が高ぶる状況下――っちゅうわけでもあるっちゃねぇ♋

 

「でもほんなこつ、一時はどげんなるっちゃろっかっち思いよったとよ☁ でもほんとはどげんして助かったんやろっかっち、不思議に思うとんでしょ?」

 

 彼女はとっくに、おれの疑問ば直接的に見抜いとうようやった⚠ なぜならこっちがまだなんも訊いちょらんうちから、自分でペラペラ知りたいことに答えてくれたっちゃけ✍

 

「わたし、あんとき急いであの乱暴なおじさんに術ばかけて、ちょっとした幻覚ば見せてあげたと✌ ちょっと例えが悪かとやけど、あいつがあなたばボコボコにしよう錯覚ば見せてあげたっちゃね✌ やけんあいつったら、なんもない空間ば勝手に蹴ったりしばいたり、馬鹿みたいにしよったけね✌ で、そん隙にこの店のおじさんに頼んで、あなたばここまで運んでもろうたと✌ ちょっと『浮遊』の術も使って手伝いながらやね✌ なんせ完全に気絶しとったし、それに見てんとおりのか弱い女ん子やけ、わたしひとりの術でも、あなたば運ぶのむずかしかったけねぇ✌」

 

「そうけぇ……☁」

 

 これは彼女なりの気遣い――そこんとこはわかっちょった☟ やけどおれのプライドに、多少ながらも傷が入った思いもしたと⚠ そげな心境なもんやから、つい口から洩れてしもうたばい⚡

 

「……よけいなことばしてからにぃ……☁」

 

「どげんして?」

 

 そげなおれの愚痴とも取れるひと言に、魔術師の彼女が、疑問の瞳ば向けちょった✈ やけん、やったら答えてやるけね――の気分になって、おれは彼女に言うてやったと☜

 

「おれは……負けたんなら負けたまんまでも良かったと! それがおまえみたいな半端な魔術師の助けば受けるなんち……これやったら恥の上塗りばい!」

 

「恥の上塗り……?」

 

 おれが怒っちょう理由なんち、彼女は理解できんやろうねぇ☁ やけん大きゅう瞳ば開いて、おれの顔ばただ、ジッと見つめちょうだけやったたい☂

 

「それ……どげんこと?」

 

「どげんもこげんもなか! あげな大勢ん前で……おれの面目丸潰れっちゅうこつったい!」

 

「でもあんまんまやったら、あなたが大ケガしたかもしれんとよ!」

 

「ケガなんち、戦士の勲章っちゃよ! おれは負けることなんか恥っち思いよらんと! それよか逃げるほうが大恥なんやけね!」

 

「ぐらぐらこくほどひどかぁ! せっかく恩返しのひとつやっち思うとったとにぃ!」

 

 おれはそれ以上、彼女の泣き声ば聞かんよう、再びベッドに潜り込んだと✄ つまり頭から毛布ばかぶって。おまけで自分の両耳もふさいでやね✉

 

「もう! 意地悪ぅーーっ!」

 

 彼女はそげなおれば、なじり続けてくれたっちゃね☛ でもなぜか、部屋からは出ようとせんかった♠♣ そん代わりなんやろうか♐ おれがかぶっちょう毛布に上から馬乗りになって、わめき続けるばっかしやった⚐⚑

 

「馬鹿馬鹿馬鹿ぁーーっ!」


前のページへ     トップに戻る     次のページへ


(C)2014 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved.

 

inserted by FC2 system