『剣遊記 邂逅編T』 第一章 出逢い……そして永遠に。 (13) 「きゃああーーっ!」
酒場のあちらこちらから女性の高い悲鳴が上がって、おれの両目は激しい火花で覆われちまったっちゃね♋
一応しばき倒される前に見ることができた中年戦士の体格は、胸の位置だけでも、おれの身長ば遥かに超えたもんやった♋ おまけに肩幅かて、おれの優にふたり分☜☞ きっと実力のある戦士なんやろうけど、そげな相手に戦士ほやほやのおれが、敵うはずなかろうも☠
左のほっぺたにきつい一発ば喰らったおれは、そのまま遥かうしろの壁まで吹き飛ばされたらしいっちゃね♋ やけんできればこんまんま、気絶したほうがでたん幸せやったに違いなかっちゃろうねぇ☻ やけどおれの意識んほうは、こげなときによけいな頑丈さば発揮してくれたと☂☃
「痛ててててて……✄✄✄」
ほっぺたに続いて後頭部まで激しく強打したっちゅうのに、おれは壁ば背中にして、のっそりと立ち上がってしもうたと⛐ しかも我ながら朦朧{もうろう}っちしとった両目は、無意識でおればしばいた中年戦士に向いとったんやねぇ☠
もうとっくに抵抗の意思なんか微塵もなかっちゅうのに、たったこんだけの仕草で、そいつはおれに新たな敵意ば勝手に感じたらしいったい☃
ある意味完全な誤解っちゃね☠
「なんやぁ! そん反抗的な顔はぁ! もう一発しばいてほしかとかぁ!」
ここで本当なら、『すんません! おれが悪かったとです!』とでも言うべきやったんやけど、そいつの次の言動が、おれの反省心ば一変させてしもうたと☢☢
「けっ! 丸っきし女みてえなツラばしよってからにぃ! どうやらおめえも戦士んようやが、まるで顔に似合{にお}うとらんばい! やけんさっさと廃業したらどげんやぁ!」
この瞬間やった♨ おれの堪忍袋が、カチンと破裂したっちゃけ♨ しかもこんときおれは、きょう買ったばっかしの愛剣ば鞘から抜いて、こげなことば叫びよったらしいっちゃね☹
「か、顔なんか関係なか! あんまし人ば舐めんじゃなかけねぇーーっ!」
こんあとのことは、もうなんも覚えちょらんかった✄ たぶんまたきつい一発ばもろうて、今度こそ本当に気絶なんかしてしもうたらしいばい☠ なにしろ気がついたら、おれはどっかのベッドに寝かされとったとやけ♠♣ (C)2014 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |