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『剣遊記 邂逅編T』

第一章  出逢い……そして永遠に。

     (11)

「初めて会{お}うた人はなかなか信じてくれんとやけど、わたし、これでも魔術師なんやけ✌ ちょっと見とって☞」

 

「あ、ああ……ええっちゃよ☁」

 

 いや、それはもうわかっちょう――とは、おれは口にせんかった⛔ さっき魔術の一端(近距離瞬間移動)ば見せられたんやが、彼女にそん自覚がないようやけ✄

 

 とにかく彼女は強気丸出しでそう言うて、おれの目の前で両手の手の平を突き出し、なにやら小むずかしそうな呪文ば唱え始めてくれたっちゃ✍

 

 ガキん頃から剣の道ひと筋でやり抜いてきたこんおれにとって、古代語を基本とするらしい魔術の呪文なんか、丸っきりのチンプンカンプンそのものやけねぇ☠

 

 そんなおれが見とう前やった♾ 女魔術師の両手の手の平から、小さな火の塊(パチンコ玉大)が、ポンと宙に発生したっちゃ♤ それからその小ささに応じた格好で、火の塊が近くにあった木の幹に可愛く飛んで命中♐ 白煙が生じて、簡単に消えてしもうた☂

 

 それは当たった所に、少々の焼け焦げが残る程度の威力でしかなかった――っちゅうこと☞ それでもおれは彼女の実力ば認め、ついでにまばらな拍手👏もしてやったけ☻

 

「お見事……♪」

 

 もちろん、多少のからかいも込めてやね☠

 

 これは割と有名な魔術やけ、その方面にうといおれかて、今のが『火炎弾』の術やったっちゅうことは、だいたいわかったっちゃ✌ やけど、こげなちっちゃい火の塊やったら、相手になんの打撃も与えられんし、それどころか馬鹿にされたっち思うた敵が、さらに逆ギレするだけやなかろっか?

 

「なんね! そん本気っち思えん拍手はぁ!」

 

 おれのわかりやすいからかいなど、彼女はとっくにお見通しやった✊ でも別に、おれが怖気づく必要もなかっちゃけ☀

 

「いやいやいや、お見事っちゃね☻ 君が魔術ば使えるっちゅうことがようわかったけ、これであとんことば心配せんでもよかっちゃね☺ じゃあ、おれはこれで✈」

 

「ねえ、ちょっと待ってよぉ!」

 

「今度はなんね?」

 

 おれはまた半分面倒臭い気分に戻って、早足で山道ば駆け下りようとしたっちゃ⛐ やけど女魔術師の彼女は、やっぱしおれんあとば、一生懸命に追っ駆けてきたっちゃけ♐

 

 けどおれは、彼女ば邪険にするにはやめにしたと⚐ 実際、たった今見せてもろうたばかりの彼女の魔術やったら、とてもやなかけど自分の身ば守り抜くんはむずかしいんやなかろっか☠

 

 そう言うことやけ、ついて来るんやったら勝手にしや♠ ――と言ったところやろっか✈ ほんとは見捨てるんも、なんか可哀想っちゅう気も否定できんとやけどね☺

 

 とにかく彼女はおれに恩返しばしたいところやろうけど、なんかけっきょくおれんほうが、守りの体勢に入らんといけんような気がするっちゃねぇ✍


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