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『剣遊記11』

第五章 人質奪還作戦。

     (7)

 沙織の願いに気づいている当の帆柱は、苦渋の汗(?)を全身(人間のほうの上半身)からしたたり落としていた。

 

「くそぉ! これでは手も足も出せんちゃねぇ!」

 

 早い話が問題のすり替え。しかし大真面目な事態でもある。

 

 この一方で、人質(沙織)からの発破(?)が効いたようであった。煎身沙も元の元気を取り戻していた。

 

「わかったぁ! なんぼオレを覚えとうかどうかは、もうちゃがちゃがだんねぇ♡ とにかくおまえらがけっとうグリフォンを、このわかいしゅふたりと引き換えにするっしぃ!」

 

「やっぱり……そうきたか……☠」

 

 なかば予想されていた話の展開で、折尾がヒョウの口で小さく舌打ちをした。

 

「どげんします?」

 

 事態を打開する妙案が浮かばない孝治は、そっと帆柱に尋ねてみた。

 

「あいつらが本気っち思えんとですけど、沙織さんたちば傷付けるわけにもいかんとですし……☁」

 

 それから世にも情けない妥協案もつぶやいた。

 

「いっそんこつ……グリフォンば渡しちゃったほうがええとかも……☂」

 

 すぐに涼子からの横ヤリが入った。

 

『あに馬鹿んこつ言いようと! 孝治ったらそれでも戦士の端くれね! もう愛想尽かしちゃうっちゃよ!』

 

「そげん言うたかてねぇ……☠」

 

 孝治も負けじと反撃(?)した。

 

「あいつらおれたちの仲間ば、ふたりも人質に取っとうちゃよ! これじゃそれこそ手も足も出せんとやけ! やけんこげなときはもう、土下座でもなんでもするしかなかっちゃよ!」

 

「おまえは誰に言いようとや?」

 

「うわっち?」

 

 傍目に見て虚空に向けて怒鳴る孝治の声は、帆柱にも折尾の耳にも入っていた。

 

「は、は、そ、それは、そのぉ……ですねぇ……☁」

 

 顔面真っ赤の思いになって、孝治は『またやっちまったばい☠』と、自らの失敗を認識しなおした。

 

 ここで別に助け舟でもないだろうが、美奈子が急にしゃしゃり出た。

 

「手が出せへん言うのやったら、先ほどうちが申しはったとおり、他に出せはるもんがあるやおまへんか✌」


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