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『剣遊記11』

第五章 人質奪還作戦。

     (13)

「……そうなるてえとぉ……今回は護衛の役目ば果たせんかったわけっちゅうことでぇ……給料から差し引かれるかもしれんちゃねぇ☠ でもこげんなったんは、店長の従妹さんが無茶ばしてくれた結果なんやけ……そこんとこ多少は考慮してくれたりして……あれ? そげん言うたらぁ……☞」

 

 孝治はこのとき、ハッと気がついた。従妹といえば、もうひとり――従妹の友達が、この場にいるはずなのだ。そのように考えて、確かいまだに服を着ないままでいるはずの店長の従妹の友達――泰子を捜して、孝治は周辺をキョロキョロしてみた。

 

「やっぱ、おらんちゃね☁」

 

 泰子が立っていたはずの地面には、彼女が裸の上から羽織っていた緑の毛布だけが、ポツンとほって置かれていた。

 

「泰子んやつ……また風になって、どっか行っちまったっちゃね☄ 涼子は見とらんやったね?」

 

 自分自身はまったく気づいていなかったが、それは棚上げ。孝治は自分の右横にいる涼子に尋ねてみた。ただし、ここで過大な期待は、禁物と言うものであろう。

 

『あたし? 知らんちゃよ♪』

 

 涼子もやはり、泰子がいなくなる現場を、見てはいなかったようだ。しかし孝治は、泰子が薄情にも、ひとりで逃げ出したとは思わなかった。

 

「きっと泰子さんなりになんか考えがあって、それでまた風に姿ば変えて、こん場から消えたっちゃね☀ みんながグリフォンに注目しちょう間にやね♐」

 

 その理由がなんであるのか――今の時点ではわからなかった。だけどここは泰子の意を汲んで、そのなにかに備えるしか他になさそうだ。

 

 いろいろな場合を想定して。

 

「友美、涼子……気ぃつけるっちゃぞ☝ これからなんか起こるかも……☁」

 

「ええ、そうっちゃね☀」

 

『いったいなんが起こると?』

 

 友美には孝治の考えが伝わったようだが、涼子には少々無理だった。しかしこればかりは、孝治にも正確に教えるすべがなかった。実際孝治自身、勘は働くのだが、それがなんなのかを説明しきれないからだ。

 

「たぶん……なんやけど、泰子さんがこれからなんかする作戦やと……思うっちゃね☁ 別に打ち合わせもなんもなかっちゃけど☁」

 

『ほんとは自分だけで逃げたんとちゃう?』

 

「う〜ん☠ それも否定できんちゃねぇ☠」

 

 彼女は逃げちょらん✋ やけん、それだけは絶対にちゃう――とは、これも絶対に言い切れないところが、孝治としても、つらい心境であった。


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