『剣遊記 閑話休題編V』 第二章 大都会、白昼の誘拐事件! (5) 最初の脅迫状の到着から、すでに一時間近くが経過した。
しかし状況に変化はなし。とにかく犯人グループからの新しい連絡がない限り、未来亭側に打てる策は、まったくと言って良いほどに存在しないのだ。
「うおのれ犯人どもらめ……いったいどれだけ我々を焦らせば気が済むのだ♨♨」
こんなとき一番冷静になっていなければならない立場の大門が、もろ一番にイライラを繰り返していた。
「こりゃあかんばい☠ また隊長の癇癪が、おれたちに降りかかってくるかもね☢」
大門の背後で、またも砂津がボソッとつぶやいた。
「そうっちゃねぇ……☁」
その危険性であれば、孝治も同感。ただしここで、よけいなチョッカイをかける者が約一名あり。
「そんじゃ、この世に未練ば残さんようにしとかんといけんねぇ✌」
「うわっち!」
衛兵隊きってのスケベぇマシーン――井堀が神業的素早さで、孝治の尻を右手でポンとタッチした。
「くぉのやろぉーーっ! こげん極限状態んときに、なんしよんねぇ!」
孝治はどこからともなく取り出したハリセンで、井堀の頭を正面からバシーーンとしばいてやった。
それと同時だった。
「見てん! 脅迫状が光りようっちゃよ!」
友美がテーブルの上に置いてある脅迫状の便せんを、急に右手で指差した。 (C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |