『剣遊記 閑話休題編V』 第二章 大都会、白昼の誘拐事件! (10) 孝治、黒崎、友美、涼子ら四人の前に、完全黒衣姿の女性ばかりが約五人。真ん中に綾香を置いて立ちはだかっていた。
それも繰り返すが全員、見た目にわかり過ぎるほどの魔術師定番スタイル。別に敵を褒めるわけではないが、けっこうな美人ぞろいでもある。その中でどうやら、中央で立つ一番長身の女性魔術師が、彼女たちのリーダー格らしい。整列している位置から一歩前に出て、孝治たちに向け、大きく言い放ってくれた。
「うちらの指示どおり、よう来てくれたっちゃねぇ☀ まずは感謝してあげるっちゃよ☻」
孝治は思った。今の口調から察して、どうやら地元ん連中のようっちゃねぇ――と。しかし北九州市はけっこう人口の多い都市なので、孝治は彼女たちの顔に見覚えがなかった。
「なんかようわからんちゃけど、たぶん近所の愚連隊みたいな連中ちゃね✍ まあ、美女軍団っち言うてやっても良かっちゃけど☻」
「うん、そうみたい✋ でもなして、あげな綺麗な魔術師さんたちが、誘拐なんち悪事ば働くとやろっか?」
友美も孝治に同意。ついでに疑問も浮かべていた。これらの会話を耳に入れながらであろう。黒崎が彼女たち魔術師に向け、大声を発した。
「身代金はこのとおり、要求どおりの金額で用意しとうがや! だから早く綾香君を解放してほしいがや!」
「店長ぉーーっ!」
一味のひとりに短刀を突きつけられている綾香も、思いっきりな泣き顔😭となっていた。しかし最も大事な眉間の角は、今のところ一応健在のようである。
「やっぱし角が目的なんやねぇ☠ あいつらも、いかにも大切そうにしちょうばい☢」
孝治は嫌味気分でつぶやいた。
それはそうとして、これからが肝心な人質解放交渉である。黒崎の口調にも、毅然とした使命感のような意志がみなぎっていた。
「まさに正念場だがや」
その雰囲気は孝治にも、ギンギンに伝わってきた。しかしここでまた、事態に突然の変化が起こった。孝治たちの前でふわふわと自動空中浮遊をしていた脅迫状が、この場で再び、ピカッと光を放ったのだ。 (C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |