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『剣遊記番外編X』

第四章 超獣対怪獣、大阪湾大決闘!

     (9)

 恐るべき先輩キマイラの猛突進。これを眼の前にしたバルキムもどうやら、創造主のように心底からビビッた感じ。

 

 真に超獣らしくもなく、つい恐ろしくなったようだ。クァァァァン!――と、トゲの付いた両腕を、無我夢中で振り回す情けない動作の繰り返し。ここはさすがに小心魔術師――裕志と同じ。気弱な人格が、もろに発揮されたと言うべきか。

 

 ところがであった。グシャッと鋭いトゲの塊が、不用意に接近してきたガストロキングの顔面左側に、見事ぶち当たる奇蹟の発生。顔面半分を、ザックリと抉{えぐ}り取る快挙となった。

 

 これってけっこうスプラッター。

 

 とにかく肉片が飛び散り左の眼球が飛び出し、さらに緑色をした体液が、ドバッと噴出!

 

 これぞまさしく猟奇の世界!

 

 当然ながらガストロキングが、グワギャアアアアアアアアアアッ!――と苦痛の大悲鳴を上げた。それでもまだ生きているところは、さすがに大怪獣と言えたりして。無論肩に乗っている尾田岩も、憤怒の叫びを上げていた。

 

「うおのれぇーーっ! ようもやってくれはったなぁ♨ こうなったらガストロキングよぉ! あんさんも光線を吐くんやぁーーっ!」

 

 今の形勢逆転劇で、おのれの崖っぷちを、さらに再認識したようだ。尾田岩が相手が飛び道具ならこちらも――とばかり。これにもともと、猪突猛進気味。臆する性質など微塵も有り得ないガストロキングの習性である。尾田岩の命令どおり、なんのためらいもなしで口をカパッと、大きく開いてみせた。

 

 するとそこから、最初に神戸の街を攻撃した黄色に光る光線が、ビカァァァァァァァァァァと発射されたではないか。

 

 その光線が、バルキムの胴体ド真ん中に命中! ズガガガガアアアアアアアアアアアンと大爆発が巻き起こり、超獣が巨大な地響きを立て、大地の上に仰向けとなってぶっ倒れた。

 

 しかしクァァァァァアン――と、一時的には怯んだものの、バルキム自体はほとんど無傷。おまけにピョコンと、すぐに立ち上がるタフネスぶりも発揮してくれた。

 

 鋼鉄よりも頑丈で強靭。さらにゴムのような弾力性に優れたバルキムの表皮が、光線による破壊を完全に跳ね除けてやったようだ。

 

 ここはさすがに、旧式と新式の違い――とは言えないだろうか。それがわかっているはずの尾田岩が、思わずであろうの歯ぎしりを繰り返した。

 

「お、おのれぇ〜〜♨ 我ながらエゲつないキマイラを創ってもうたもんやでぇ♨♨」

 

 しかしくやしがってはいても、バルキムの微妙な変化も見逃してはいなかった。

 

「そやけどあの野郎、ガストロキングの光線にビビッとるやんけぇ✌ このチャンスを逃すんやないでぇ☚☛」

 

 創造主からの新たなる命令(具体性皆無)を受け、すぐにガストロキングがグギャオオオオオオンと、攻勢を再開させた。

 

 顔面の左半分を潰されても、そこは不死身の生命力。おまけに戦闘力のほうも、ほとんど衰えてはいなかった。その反対でバルキムのほうは、クァァァァァァン……と、誰が聞いても明らかに情けない有様。そのように聞こえる吠え声を上げ、両腕で顔を隠しながら、一歩二歩と後方に引き下がっていた。


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