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『剣遊記 番外編X』

第四章 超獣対怪獣、大阪湾大決闘!

     (10)

 そんな超獣の有様を見て、今度は荒生田が歯ぎしりを繰り返す番となった。

 

「な、なんねぇ、あん野郎ぉ! 完全に憶病風邪に吹かれとんやなかねぇ♨ もっと攻撃ば続けさせんねぇ☞☜」

 

「は、はい……でもこれからいったい、どげんすればよかでしょうか?」

 

 こちらも憶病風邪に吹かれている裕志であった。しかし実際、このような大怪獣同士の決戦の現場指揮など、当たり前以前の話だが、過去に一度も経験が無いのだ。

 

 まあこれは、地球上の全人類がそうだと言える話だけど。

 

 しかし今は、そのような理由で、ためらっている場合ではない。けっきょく空の上にて、小心魔術師が迷っている間にだった。ガシッと二頭の巨大生物が、再び両腕を絡ませて組み合う格好となっていた。

 

 つまりバルキムが、ガストロキングに捕まったわけ。

 

 一方はトゲ付き棍棒のような両腕。片やもう一方は、右腕に鎌と左腕に長い鞭。言わばルール無視の変則格闘技の様相とも言えそうだ。

 

 この事態は、現在怯んでいる状態のバルキムに向かって、ガストロキングが隙を見つけて飛びかかった結果の、要するに必然的結果でもあった。

 

 しかしバルキムにしてみれば、すぐ眼の前で、半分崩れた顔面と向き合っているわけでもある。これではたとえ超獣であっても、まるでゾンビを真正面で相手にしているような心境であろう。なんと言ってもバルキムには、裕志の情けない人格が備わっているのだからして。


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