『剣遊記 番外編X』 第四章 超獣対怪獣、大阪湾大決闘! (6) 「えーーい! イライラさせるやっちゃねぇ♨ おい、到津ぅ!」
迷いだらけの後輩に、ついに業を煮やしたようだ。荒生田が今度は、銀色のドラゴンに大声をかけた。
「はい、なにあるね?」
すぐに長い首をうしろに曲げて、到津が空中にて振り返った。これにサングラスの戦士が、偉そうにのたまった。
「おまえかてドラゴンの端くれなんやけ、火ぃぐれえ吐けるっちゃろ☜ ちょっとそれば、実践してみろっちゃ☚」
「はいわかたある☆ お安い御用だわや✌」
到津は簡単に了承した。それからワニのような牙が生えそろった大口を、荒生田たちとは別の方向へと向けた。さらにこの次は、物の見事であった。ボオオオオオオッと、ちょっとした火炎の帯が到津の口から放射され、遥か宙空の先まで伸びていったのだ。
その火をいったん鎮めてからだった。
「ワタシとしては、こがなもんある✌ ても、威力あまりやれんわ〜たから、あの怪獣相手には、効果ない思うだわね✄」
おのれの火力を、とりあえず披露してからである。シルバードラゴンこと到津が、やや照れ臭そうな感じになってささやいた。しかし荒生田はこれに、充分満足そうな顔となっていた。
「よかよか♡ 火ん吐き方ば、裕志に教えてくれりゃあよかっちゃよ☀ よかや、裕志♐ 今んやり方やけね☛」
「は、はい……つまりぃ、口ば大きゅう開けさせればよかっちゅうことですね♠♣♦」
言われてみれば、実に単純そのもの。だけどこれに気づくまで、ずいぶんと長い時間を必要としたわけ。やっぱり裕志は情けない。それでも精いっぱいの大声を出して、裕志はバルキムに、新しい指示を与えてみた。
「と、とにかくやらせてみますっちゃ★ ねえバルキムさぁん! 口ば開いて火ば吐いてみてくださぁーーい!」
クォン?
これに応えてバルキムが、カパッと鳥のくちばしのような大口を開いた。意思の伝達は、今も抜群なのだ。
無論この技に期待している者は、荒生田や裕志たちばかりではなかった。
「やったぁ! 大怪獣が火を吐くなんて、それこそなから見られねえ快挙なんだがねぇ☆♡」
静香も今度はわくわく顔になって、事態の急展開を、今か今かの期待の瞳で見つめていた。 (C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |