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『剣遊記 番外編X』

第四章 超獣対怪獣、大阪湾大決闘!

     (5)

「ふぉっふぉっふぉっふぉっ☆☆☆ こないな戦いなんぞ、もう無駄やで無駄ってもんやぁーーっ!」

 

 尾田岩の狂気に満ちた笑い声のみが轟音の響く中、神戸市周辺一帯にばら撒かれ続けていた。ついでにようやく、シルバードラゴン――到津に跨っている裕志に、このとき初めて顔を向けた。さらに続いて、バルキムの方向にも振り返った。

 

「ようバルキムよぉ! そないなしょーもあらへん弱小魔術師なんぞとはもう縁を切ってやなぁ、この創造主たる我れの元へと帰ってきはったらどないやねぇーーん☻☻☻」

 

 要するに尾田岩は裕志を、これ以上がないくらいに舐めきっているわけ。

 

「みっとがなぁーーい! あんなこと言ってるだがねぇ!」

 

 尾田岩の嘲笑的な笑いで、バードマンの女戦士の額に、怒りのスジ(十文字型)が浮かんでいた。

 

 これと言うのも、今や肝心なときになってダンマリしている荒生田に、全部の責任がある――と言ってもよいだろう。そんな状況なものだから、静香の怒りの矛先は必然的に、味方の総大将のはずである、サングラス戦士へと向けられていた。

 

「ちょっとぉ、荒生田さぁーーん! あんたってあたしたちん中で、いっつも一番のめしにいばってたんさぁ! だからこんなときにいっからんぺーせんで、なんか早く決断でもするだがねぇ♨♨」

 

 すると言われた荒生田が、これまたじっと腕を組んだ体勢のまま、突然大きな声を張り上げた。

 

「ゆおーーっしぃ!」

 

 これは静香に触発されたためであろうか。しかし荒生田の矛先は彼女ではなく、どちらかと言えば裕志のほうに向いていた。

 

「ゆおーーっし! 超獣……やなか! 怪獣……でもねえっちゃ! これは一種の怪物全体の定番たぁーーい! 裕志ぃ! バルキムに火ば吐かせんしゃーーい!」

 

「ええっ? ひ? 火ばですけぇ?」

 

 いきなりそのような突飛を言われたところで、『わっかりましたぁ! 火ば吐かせますぅ!』などと、簡単に了解できる裕志ではない。

 

「火って……バルキムって、火ば吐けるとですけぇ?」

 

 疑問は当然。裕志たちは超獣が火を吐く能力を知っているどころか、そのような力があろうとは、夢にも考えていなかった。

 

 だけど、試してみる価値だけはありそう――な気はした。ところが試してみようにも、その方法がまったくもって思いつかない裕志であった。

 

「わ、わかりましたぁ……火ば吐かせてみますけぇ……って、いったいどげんしたらよかでしょうか?」


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