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『剣遊記 番外編X』

第四章 超獣対怪獣、大阪湾大決闘!

     (4)

「あの人やぱり、とこかおかしのことあるだわね☞ あが〜に暴れる怪獣に乗て、全然平気な顔してるのこと♋」

 

 ドラゴンの到津でさえも、ある種の恐れと戦慄と、さらに呆れと大きな謎を感じている口調をしていた。

 

 それはまあともかくとして、荒生田は尾田岩の戯言{ざれごと}など、まるで耳には入れていないようだった。

 

「使える武器っちゃねぇ〜〜☢☻?」

 

 それどころかこの場で大真面目にも、裕志が先ほど叫んでいたバルキムの戦い方について、両腕を組んで考え続けていた。

 

 つまりが到津の背中の上で、あぐらをかいた格好。シートベルトも無しで(この世界に存在するわけがない!)、実に危険極まる振る舞いと言えた。

 

「あの馬鹿チンやけど、きちんとキマイラについて研究しちょうおっさんのことやけ、きっとバルキムの体のどっかに、なんか隠し武器があるに違いなかろうやぁ☻ くそぉ、それがわかればやねぇ……♨」

 

 荒生田の、歯痒そうでいながら、なんだか落ち着き払っている姿。この場の現況及び雰囲気には、まったくそぐわない様子っぷり。そのため先輩からの指図がなくなった状態の裕志は、それこそ実効性の無い指示を繰り返すばかり。バルキムは相変わらず苦戦の渦中にあった。

 

「わわぁ! バルキムぅーーっ!」

 

 ここで裕志は思わず、甲高い悲鳴を上げた。たった今目の前で、バルキムがガストロキングの右足の蹴りを受け、巨大な体が周辺の建物や館を巻き添えにして、ズドーーンと大音響を立てて倒れ込んだからだ。

 

 もうもうとした粉塵が少しだけ晴れたあとには、廃材と鉄クズと――仰向けに倒れてもがくバルキムの姿があるのみだった。

 

「駄目だんべぇ! 裕志さん、びしょったなぁーーい!」

 

「そ、そげん言うたかてぇ……☃」

 

 かなり頭に来ている感じの静香から急き立てられたところで、裕志にもこれ以上の打つ手が、もはやこれっぽっちも見当たらなかった。


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