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『剣遊記 番外編X』

第四章 超獣対怪獣、大阪湾大決闘!

     (3)

 裕志と静香の会話が聞こえたのだろうか。

 

 もちろん理由は魔術による盗聴なのだが(名付けて地獄耳!)、尾田岩が大笑いを繰り返した。

 

「ふぉっふぉっふぉっ☆ ガストロキングに弱点など、あらへんに決まってけつかるんやぁ☀ しかぁーーし、あえて言うたら、我れの創造物であるバルキムかて、おんなじように弱点などあらしまへんのやでぇ☺ 要は操作する魔術師の実力の差がモノを言うんやぁ☆☀」

 

 早い話が、どうでも良いおのれの自慢の吹聴。このとき荒生田たちと尾田岩のそれぞれの相対的位置は、実はお互いの大声がよく聞こえるほどまで近づき合っていた。

 

 片や空中を飛ぶドラゴンの背中の上。それからもう片方は、現在戦闘中にある大怪獣の右肩に、堂々と居座ったまま。つまり荒生田たちはここで初めて、尾田岩の顔を拝見したわけである。

 

「ああっ! あの人っちゃあ! ぼくばさらって、バルキムに人格ば移植したんわぁ!」

 

 ようやく尾田岩の存在を再認識した裕志は、大声を上げて大迷惑魔術師を、右手で指差した。荒生田と静香と到津にとっては、初めての御対面となったわけ。

 

「そうけぇ☻ あいつがこれ全部の黒幕けぇ☻☠」

 

 荒生田がキラリと、サングラスと前歯を光らせた。しかし意外にも尾田岩のほうは、顔を見られても我関せずの様相でいた。どちらかと言えば現在、ガストロキングの操縦に、夢中になりきっている感じでもあった。

 

 敵メンバーの中で唯一顔を知っているはずの裕志が近くにいるというのに、ほとんど無反応な態度でいるのだから。

 

 それはとにかく本来ならば、キマイラをコントロールする魔術師は、戦闘開始と同時に近くの高い所などへ避難をするべきもの。だがそこは、精神がかなりトンデいる尾田岩である。もともとから乗り心地が極端に悪い怪獣の肩で陣取る行為を、むしろ悪人の特権(?)として享受している節があった。

 

 実際ガストロキングが移動するだけで、揺れや振動などが、相当にひどいはず(巨大ロボットに乗る操縦者は、その大振動に耐えられなくて死んじゃう――これは有名な話)。ところが尾田岩自身は、酔いもめまいもまったく発症していない様子なのだ。


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