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『剣遊記 番外編X』

第四章 超獣対怪獣、大阪湾大決闘!

     (18)

 とにかくそんな勝利で盛り上がっている、荒生田のうしろでは――であった。

 

「あ……あは……あはは……か、勝っちゃいましたぁ……♋♋」

 

 信じられない思いの勝ち戦で、裕志は完全放心状態となっていた。そのためなのか、なかばうわ言のようにつぶやき続けているばかり。

 

「ほ、ほんなこつ勝っちゃって……ぼくこれから、どげんしたらよかとでしょうかぁ……?」

 

 一応は自分の指示で(黒幕は荒生田なのだが)、自分と同じ人格を持つ超獣――バルキムが勝ったと言う事実。それが今もって、まるで信じられない心境でいるのだ。

 

 もっとも裕志と同じ心境であれば、それはバルキムも共通の立場でいた。

 

 たった今強大な敵を打ち破ったというのに、どことなく所在げのない、相変わらずのクォォォン……とした情けない吠え声を、先ほどから繰り返しているばかり。

 

 大阪湾のド真ん中の海上で、ポツンと浮かんだ格好のまま(今も立ち泳ぎを続行中でいるようだ)。

 

 そんなバルキムの心細げな姿を見て、静香がすぐに右手で指差した。

 

「見て、バルキムがあたしたちさ呼んでるべぇ☟」

 

「あん野郎ぉ☠ 勝つには勝ったっちゃけど、こん先どげんしたらええのか、自分でもようわからんみたいっちゃねぇ☢☛ おい、到津、あいつん所まで降りちゃりや☟」

 

 荒生田も自分たちの支配下にあるキマイラの心情を、いの一番で察知したようだ。この辺の人の心理を見抜く素早さは、さすがに年の甲と言ったところか。

 

「あいやあ、わかたある♐」

 

 ガストロキング大爆発のとき、一行はいったん危険を避けて、遥か高空まで避難をしていた。なのでここらでもう大丈夫と、到津が荒生田から言われたとおり翼を大きく翻{ひるがえ}し、三度目となる眼下の海面への降下を開始した。

 

 もちろんバードマンである静香も、白い翼で銀色のドラゴンのあとを追い駆けた。

 

 この間ずっと、小心魔術師の裕志は、うわ言を繰り返しているままだった。

 

「ば、バルキムが勝ってぇ……ぼ、ぼくはほんなこつこれからぁ……どげんやって超獣ば世話すりゃよかとやろっかねぇ……☢☠」


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