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『剣遊記 番外編X』

第四章 超獣対怪獣、大阪湾大決闘!

     (15)

 するとやはり馬鹿正直にも、バルキムがすなおにクォンと、裕志にうなずいてくれた。それから組み合っているガストロキングから、無理矢理的に身を離そうともがき始めた。

 

「むっ! これはあかん!」

 

 無論、怪獣の右肩にいる尾田岩こそ、バルキムを創った本来の創造主である事実は、もはや誰もが承知済み。その尾田岩が裕志の声を耳に入れたとたん、顔色を一瞬に変えて叫び始めた。

 

 ちなみに赤から青。

 

「あ、あきまへぇーーん! やつらこれに気づきおったでぇーーっ!」

 

 けっきょく自分で、荒生田たちの思いつきが、見事ズバリであったことを証明してくれた格好。なんと言っても口から発射されたミサイルと同様、新造キマイラ――バルキムの頭の角に武器(本当にあるのかどうかは、裕志たちにはまだわからないけど✄)を仕込んだ者は、当の自分自身であるのだから。

 

 あとでよーく考えてみたら、この際角は武器でもなんでもないんや! ほんまただの飾りなんやでぇ――と嘘でも言っておけば、荒生田たちの奥の手を封じられたはずなのだ。しかしそこは、ゆがんだ天才によくある性癖――つまり尾田岩も融通が利かない性分なのであろう。

 

「ガストロキングよぉ、バルキムから離れるんやないでぇ! バルキムの最後の武器を喰ろうたら、あんさんがお終いなんやでぇーーっ!」

 

 もはや秘密も秘策もなし。すべてが有効であることを、尾田岩自らが曝け出す有様。

 

 だが、やはり遅かった。


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