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『剣遊記 番外編X』

第四章 超獣対怪獣、大阪湾大決闘!

     (14)

 尾田岩はもうほったらかす。

 

「決着ぅ〜〜☠ 決着ぅ〜〜☠」

 

 裕志はこの間、ずっと悩み続けていた。だけど小心魔術師の頭では、事態の早期収拾方法が、簡単に思い浮かぶはずもなかった。

 

 そのような状況なものだから、生まれてから一度も悩んだ経験のない先輩戦士――荒生田のほうが、決定的に発案が早かった。

 

「ばっきゃろぉーーっ! バルキムん頭にデッカい角ば生えとろうが! あれもきっと隠し武器に違いなかっち、オレは思うっちゃぞ!」

 

 荒生田は断言した。ただしこの考えは、事実に基づく根拠も具体性もなし。完全なるただの思いつきであると、裕志を始め静香も到津も、そのように考えていた。

 

 つまりが見た目の印象とイメージだけ。それをそのまま御託として並べているだけなのだ。

 

 しかしそれでも、切羽詰まった状況下においての思いつきは、時に途方もないほど大きな説得力を発揮する場合もあるのだ。

 

「……もしかして……荒生田さんの言うとおり、あれが使えるんかい?」

 

 初めは半信半疑――いやいや一信九疑の顔だった静香も、だんだんと荒生田に同調している感じ。その思いを確かめるつもりなのか。静香は到津に尋ねた。

 

「ねえ、世話ねえかどうかわかんねえけい、やっぱりあれってなから武器って、ちっとんべ思わんかい?」

 

「そ、そうあるね……☁」

 

 だが到津とて、静香を納得させるような返答はできなかった。そのためか、解答はどうしても、荒生田に合わせた感じとなっていた。

 

「た、たぷん……口からミサイル吐くパルキムさんのことある☠ もと武器隠してるあるの、間違いないわや……☁」

 

「ゆおーーっし! 決まったっちゃあーーっ☀」

 

 これにて全員の意見がそろった格好(?)。サングラス😎戦士が後輩魔術師に言い放った。

 

「裕志ぃ! あん角ば発射するよう、バルキムに命令ったぁーーい☆ あれぞ最後の最後の最後に使う切り札に違いなかっちゃけぇ、到津ぅーーっ! もっとあいつらに近づくっちゃあーーっ!」

 

「わ、わかたある☢」

 

 再び到津が急降下を開始。その背中で裕志はと言えば、荒生田の決定を半信半疑――いや、ここまで話が到れば、六信四疑。とにかく疑問が、完全に拭いきれない気持ちでいた。

 

「ほ、ほんなこつですけぇ……☁」

 

 しかしそこはやはり、先輩には絶対に逆らえない遺伝子とDND。

 

「わ、わかりました……やってみますっちゃ……でも、これもどげんやってですけぇ?」

 

 海上で苦戦しているバルキムに、到津が恐る恐るながらも急接近の最中だった。裕志は震える口調で、先輩に再び尋ね直した。

 

 これにも荒生田が一喝。

 

「ぶぁっかろい! 口ば開けっちゅうたら素直に開けるバルキムなんやけ、角ば飛ばせっちゅうたらよかっちゃろうがぁ!」

 

 そこへ静香も、慎重そうに口をはさんでくれた。

 

「その前にちょっと、バルキムを敵の怪獣から離したほうがええのぉ✈」

 

 もちろん彼女に対しても、裕志は言いなり同然でいた。

 

「は、はい……そんとおりにします✍」

 

 もはやここまで外野たちから追い詰められた以上、裕志には観念の胸中しかなかった。やがて到津が低空飛行に移り、大声が再び届きそうな距離になってから、裕志は自分と同人格の超獣に呼びかけた。

 

「あのぉーーっ! バルキムさぁーーん! いったんやつから離れて、それから頭ん角ば発射してみてくださぁーーい! さっきのミサイルみたいにぃーーっ!」


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