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『剣遊記 番外編X』

第四章 超獣対怪獣、大阪湾大決闘!

     (12)

 しかし荒生田に付き合わされている周りの者たちとしては、これは尋常ならざる事態でもあった。

 

「うわ、荒生田さん! そが〜に暴れないで、もうちょとはいごんすーなにしてほしあるね♋」

 

 なにしろ背中でサングラスが騒ぐものだから、到津も危険な飛行を強いられている状態。

 

「わひぃーーっ!」

 

 とうとう弾みで、裕志が背中から落ちそうになる有様。

 

「わぁーーん☂ 怖かぁーーっ☂☂」

 

「裕志さーーん!」

 

 静香が慌てて飛んできて、ガシッと裕志の黒衣のエリ首部分を両手でつかみ上げた。これにて九死に一生を得た感じ。

 

「ぐべっ☠」

 

 だけども裕志は、一時的だけど窒息の状態。この件は不問にしよう。それよりも到津が下を向き、高い声で叫んでいた。

 

「見るわや! 二匹とも海のほうに向かってるあるよ!」

 

 到津が長い首で示している先では、バルキムとガストロキングが両者組み合ったまま、激闘の舞台を神戸港へと変えていた。

 

 もちろんガストロキングの右肩には、創造主たる尾田岩が乗ったまま。この世でこれほど乗り心地の悪い乗り物はない――と、前にも記してはいた。しかしこいつは恐らく、魔術でその辺の苦痛を緩和しているのだろうか。今でも平気そうな顔をして、相変わらずの居座りを続けていた。

 

 それはそうとして、二頭の巨大過ぎる体格がついに絡み合ったまま――あるいはもつれ合っているのかも。港の埠頭から海上へ、ザッバアアアアアアアアアアンと転落して果てた。


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