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『剣遊記\』

第三章 南から来た大海賊。

     (3)

 このような三人(たぶん涼子は認識されていないだろうけど)の漫才には我関せず。帆柱と友美はふたりして、永二郎の話に真正面から聞き入っていた。それがどうやら、佳境に入ったらしかった。

 

「瀬戸内海に海賊けぇ……✍」

 

 ケンタウロスの戦士が重々しく、両腕を組んでうなっていた。それからひと言。

 

「俺ん場合、陸での仕事が多かっちゃけ、海でなんがありよんのか知らんかったちゃけど、そこまでひどうなっとうっちゅうのはなぁ……♨」

 

「そんで、永二郎さんが乗ってた第五開陽丸が海賊から襲撃ば受けて、丸ごと拿捕されちゃったっちゅうわけっちゃね♐ そんで、そん場所はどこね?」

 

 友美の問いに、永二郎は口惜しさでくちびるを噛み締めているような感じになって答えた。

 

「……たぶん、瀬戸内海の真ん中辺り……岡山県と香川県の中間と思うんさー⛴ あの海域は海図にも載ってねぇ島が多くてさー、いきなり島影からどぅまんぎるほど何隻も船団が出てきてさー、しかます間に開陽丸を取り囲んでしまったんさー……おれはそのとき、船長から海に落とされ、遠くにひんぎるように言われたんさー⚠ 船長はおれがワーオルカなんを知ってるから……でも、ひんぎるときに海賊に追われてさー、背中にいっぺー銛を打たれた。あとはもうでーじ帰りたい気持ちだけで……ここまでたどり……着いてた……さー⚡」

 

「永二郎さん……☂」

 

 目に涙をにじませた永二郎に、桂がいたわるようにして身を寄せた。周囲の人の目など、初めから気にもしていないようだった。

 

「なるほどのぉ……✍」

 

 ワーオルカの青年の話を聞き終えた帆柱が、ここで再び両手を組み直し、一同を見回してから言った。

 

「海に疎かったとはいえ、瀬戸内海で海賊が出没する話なんぞ、俺は今までいっちょも聞いちょらんやったが……これは俺の勉強不足やったたい……✊」

 

「その勉強不足の隙間を狙って、新参の海賊が現われたっちゅうことだがや」

 

「店長!」

 

 話の席に、突然黒崎が顔を出した。もちろん彼のうしろには、秘書の勝美もパタパタと飛びながらで控えていた。


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