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『剣遊記 番外編W』

第四章 たったふたりの大海戦。

     (2)

 船内全体が、大いに慌てふためく中だった。船の後部から突入した清美と徳力は、その真下の船倉で、驚くべき大発見の真っ最中でいた。

 

「清美さん! こん革袋に入っちょう白い粉は麻薬ですばい! それもボクが知っちょう限りでも、極めて純度が高そうやけん!」

 

 などと、かなり興奮気味でまくし立てる徳力の右手には、白い粉――彼が言うところである麻薬のひとかたまりが握られていた。徳力はその粉を鼻で嗅いで、すぐに実態を見破った――いや嗅ぎ破ったのだ。

 

 そこはさすがに、ドワーフ族出身の戦士といえるだろう。彼らは伊達に、人間よりも長生きをしているわけではない。ところが清美のほうは麻薬自体に、特に関心を示していなかった。

 

「ふぅ〜ん、じゃあこん船は、麻薬の密輸船やったわけばいね♠ そぎゃんならこれで、遠慮なんていっちょんもなし★ 徹底的にやれるばいねぇ♡ こっちんほうが最高ばぁーーい!」

 

 むしろ大暴れの絶好の口実ができたわけ。見ればなんだか、この場にて小躍りをしかねないほどに喜んでいた。そんなものだから、徳力のほうが、真逆で顔を青ざめさせる思いとなった。

 

「ちょ、ちょっと! そぎゃんっちもしかして……もしもようと調べてこん船が無実……つまりただのだまされて運び屋にされとったっちゅうのやったら、いったいどぎゃんするつもりやったとですかぁ?」

 

 そんな徳力に構わず、清美自身はもはや、大暴発寸前だった。

 

「せからしかぁ! とにかくあたいは悪の密輸団壊滅んために、うたるっくれえひちゃかちゃに暴れさせてもらうったいねぇ! だけんそん間にトクは、証拠品ばかき集めとくんやぞ! ええばいね!」

 

「はいはい、こぎゃんなったらもう、たったふたりだけで海戦っちゅうことですね☂☠」

 

 事ここまで到れば、いつも命じられているとおり、後方支援任務に専念。仕方なく清美から言われたとおり、徳力は証拠品である麻薬の粉集めに取りかかった。


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