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『剣遊記 番外編W』

第四章 たったふたりの大海戦。

     (17)

「あんおちゃっか野郎がぁーーっ♨♨♨」

 

 大豊場のよけいな挑発で、清美の血圧が上昇しないはずがなかった。

 

「てめえっ! こぎゃんデタラメん真似してからにぃ! あたいは絶対許さんけねぇ! たとえ地獄に堕ちたかて絶対這い上がって、てめえば逆に地獄の底の底のまた底まで叩っつこかし(熊本弁で『落とす』)ちゃるけぇ!」

 

 手すりをギュっとつかんで海の上にいる大豊場たちに向け、清美は絶叫を繰り返した。こちらは拡声器など、全然なしで。ついでだが手すりにメリメリと、清美の指がめり込んだ。恐るべし大握力!

 

「清美さん! 逆ギレばしちょう場合やなかとですよぉ! いったいどぎゃんしますぅ!」

 

 こちらもこちらで、今も一生懸命中。導火線をなんとか踏み消そうとしている徳力の、これまた悲痛が木霊した。

 

 だがそれでもやはり、火は消えなかった。

 

 大爆発五秒前はこのときすでに、最終の段階へと突入していた。


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