『剣遊記[』 第四章 見よ! 奇跡の大合体。 (8) 「三枝子さん……ずいぶんストレートな行動に出たっちゃねぇ〜〜♋」
フェニックスと三枝子が一対一で交渉を始めた現場を、山頂から火口を見下ろす格好で眺め、孝治は先ほどから、胸の鼓動が止まらない思いでいた。
それも無理はなし。たった今なんの予告も脈絡もなしで、フェニックスの声がいきなり頭の中に鳴り響いたからだ。
さらになんと言っても、相手は神にも等しい存在であるフェニックスなのだ。それなのに三枝子は一歩も引き下がろうとはせず、少なくとも真正面から、話を聞いてもらっていた。
もちろんフェニックスの熊本弁も、孝治たちにまでビンビンに伝わっていた。しかし今はその件について誰も突っ込まないほど、事態の急展開に全員が圧倒されているのだ。
「ほんなこつ凄かもんちゃねぇ……あげなとんでもなかことばやりよんやけぇ……♋」
『あたし、近くで見てくるばい!』
「うわっち! 涼子ぉ!」
すっかり感心の渦中にいる孝治の右脇をすり抜け、涼子が火口へ向けての急降下。いつもの野次馬根性を発揮して、間近で見物しようという魂胆なのであろう。
「おっ? なんか言うたや?」
ここで思わず声を出した孝治に、荒生田たちが一斉に顔を向けた。
「うわっち! あっ、いや……なんでんなかです……☻」
慌てて頭を横に振り、素知らぬ顔をして、孝治はこの場をごまかした。これはかなり苦しい話の展開なのだが、幸いにもみんな、主な関心はフェニックスにかかりっきりでいた。
「あ、そう😑」
このとき再度の余談であるが、荒生田は自分で言った定番であり黄金である親父ギャグ(超有名な阿蘇山と『あ、そう』の引っかけ)に、自分自身でまったく気づいていないご様子。
とにかく孝治はこの状況に、ほっとひと息を吐く気分だった。それからすべての事情を知っている友美だけに、そっとささやいた。
「……ったくぅ、涼子までが無茶ば始めよったちゃねぇ☠☢ もしフェニックスに幽霊が見えたら、いったいどげんするつもりやぁ?」
これに友美が、苦笑気味で応じてくれた。
「それはわたしにもわからんちゃね☁ でも……今んところは、どうやら見えてなか、っちゅう感じやけどね☞」 (C)2013 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |