『剣遊記[』 第四章 見よ! 奇跡の大合体。 (6) 「あたし……行ってくるけ!」
仲間内でワイワイやっている孝治たちなど関係なし。三枝子がここでも、一目散に火口へと駆け下りた。
「うわっち! 無茶すんやなかばい!」
いつもひとり走りな三枝子の行動ぶりに、内心ハラハラドキドキの孝治は、つい大声で呼び止めようとした。それを荒生田がポンと、孝治の左肩を右手で軽く叩いて言ってくれた。
「ここまで来たとやけ、今さらヘタな小手先みたいな真似もできんやろ☺ ここはもう、彼女の好きにやらせちゃりや☞」
今回の冒険中、なんだか変に好感度の高い荒生田であった。それがここでも、再びヤケに先輩らしい発言をしてくれた。
実際に先輩なんやけどねぇ――と、孝治は思った。そのとたんだった。
「先輩……せっかくカッコええこと言うとやったら、こげな真似だけはやめてくれませんか?」
荒生田は肩を叩いたついでか。孝治の胸やお尻も左手でさわりまくってくれていた。おかげでガスッと、ここでまた無用な孝治の鉄拳――それもひねりを加えたスクリューパンチを、顔面にお見舞いしてあげる始末となった。
余談だけれど、サングラス😎に傷はなし。この一方で清美と徳力が、腰の剣に手をかけていた。
「ここは一応、三枝子に任せておくんばい♠ やけど、ヤボうなったらあたいらがかせ(熊本弁で『助ける』)せにゃいけんけね♐ トク、用意ばしときんしゃい♆」
「は……はい!」
フェニックスと戦おうなど、それこそ天罰テキメンもの。しかしここは、用心に越したことはないのだろう。もちろん清美とて、その点は心得ていたようだ。
「もっともまずは、三枝子のお手並み拝見ばいね☚」
「そうっちゃね✍ ここはあんまし、大勢で押しかけんほうがええっち思うけ✄」
孝治の右横で火口を覗いている裕志も、事態を静観する構えでいた。ただし孝治には見えていた。裕志の両足が、思いっきりガタガタと震えている様子が。
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