『剣遊記[』 第四章 見よ! 奇跡の大合体。 (18) すでに三枝子は、フェニックスとの会話に、全然怖気づかなくなっていた。この状況は、自分自身では、まったく意識をしていないのだが。
そのような心境にまで達しているので、三枝子は生きていたときと同じ調子(?)で、改めてフェニックスに尋ね返した。
訊きたい疑問は、とにかく山ほどあった。しかし、いの一番に尋ねたい質問といえば、まずはこれであろう。
(いきなり本番に入らんでください! 順番的に言ってあたしは、いったいどげんなっとうとですか? 死んでんのか生きてんのか? それにここはどこなんですか?)
気持ちはおだやかに尋ねたかった。だけどどうしても強い口調になって、一気にまくし立ててしまうのだ。
『こ、ここは……♋』
三枝子の剣幕に、フェニックスともあろう者が、ここでも圧倒されたのだろうか。ややためらい気味――おまけに押され気味な感じで答えてくれた。
『ここは……先ほどから申してるとおり、うちの精神世界の中なんです☁ そしてあーたは、一時的に肉体から離れとう精神体であり、現在、うちの精神の中に入れさせてもろうとるだけなんです☁』
(えっ?)
三枝子は一瞬だが、心臓(動いているのか止まっているのかもわからないが)がドキンと大きく鼓動したような気になった。
(せ、精神体? それって魂のことなんですか? それやったらやっぱり、あたしは死んだんじゃなかですか!)
『やけん、違いますって♐』
フェニックスのほうも、なんだかムキになっているような感じがしてきた。
『あーたの肉体は、仮死状態で地上に置かれてますけ☟ 今ごろは仲間の方たちで回収されとうっち思います✈ そやから本当の死後の世界は、こぎゃんな場所ではありましぇん⚠』
(ふぅ〜ん、ここって死後の世界やなかとねぇ✿)
三枝子も死後の世界の話ならば、何回か聞いた覚えはあった。しかし、今現在瞳にしている光景は、確かに昔聞いた話とは異なっていた。ここはもう少し、フェニックスの話を真面目に聞いたほうが、場の空気的にも良さそうな雰囲気である。
そんな三枝子の心境が、伝わっているのか、いないのか。フェニックスの話は、早くも本題へと近づいていた。
『だけん、精神体のあーたが元ん体になおされたら、あーたの肉体は意識ば取り戻すことになりますと☞ だけん心配することはなーんもなかです✌』
(なんか話が安直になってきようみたい☹)
『そ、それば言われてしもうたら、身もフタもなかなんですがぁ……☁』
三枝子からのツッコミに、再びフェニックスともあろう者が、『ぐぬぬ……☢』とノドを詰まらせた。こうして改めて拝見をさせてもらえば、やはり神よりも人の感情に近いモノを、このフェニックスは持ち合わせているようだ。 (C)2013 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |