『剣遊記[』 第四章 見よ! 奇跡の大合体。 (16) 「涼子ぉーーっ! ポルターガイスト{騒霊現象}やるっちゃあーーっ!」
『うんっ!』
孝治も清美に負けず劣らずの大声で絶叫した。この声に応えてくれて、涼子が恐らく、ありったけであろう霊力をフル発動させようとした――ようだ。
『きゃあーーっ!』
とたんに一陣の暴風が涼子を襲い、ポルターガイストを中断せざるを得ない事態となった。
『あっ! 駄目ぇーーっ!』
そのため涼子は、三枝子の体を浮かび上がらせることができなかった。これは裕志と友美にも言える状況で、できるならばふたりとも、とっくに先ほどの『浮遊』の術で、三枝子を救っていたはずである。
「あーー……」
そんな孝治たちの瞳の前で、三枝子が遥か崖下へと落下。眼下に広がる樹海に飲まれ、その姿が視界から消えていった。
「三枝子ぉーーっ!」
顔中を涙と火山灰まみれにして、清美が泣き叫んだ。また、このときになってようやく、フェニックスによって足止めをされていた男たちが、断崖まで駆けつけた。
だが、なにもかもが遅かった。
畑三枝子は、もういないのだ。
彼女の代わりに二羽のひなワシだけが、いつまでも鳴き続けていた。
ぴいっ ぴいっ
死の意味などわかろうはずもない、無垢な魂たちだけが。
「すんましぇん……清美さぁん……☂」
「うわぁ〜〜ん!」
徳力も裕志も、さらにこれは非常に珍しい姿だが、なんと荒生田でさえも、サングラスの奥の三白眼を濡らしていた。
「うおおおおっ! こげな悲しい思いは生まれて初めてばあーーいっ!」
もちろん孝治と涼子も泣いていた。
「ちくしょう……こげなこつになるなんちぃ……☂」
『ごめん、孝治……あたしも助けたかったとにぃ……☂』
さらに友美も――と言いたいが、彼女だけは三枝子が落ちた瞬間に起こった異変に、誰よりもいち早く気がついていた。
「風がやんじょる……それに……フェニックスがおらんごつなっちょう☞」 (C)2013 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |