『剣遊記[』 第四章 見よ! 奇跡の大合体。 (1) 恐らく上空からも見えているはずである。しかしフェニックスは地上にいる孝治たちなど、まったく気にも留めていない様子。高速で一行の頭上を、ビューンと飛び去っていくだけだった。
この状況は樹木などに視界を遮られて見えない――と言うよりも、最初っから下界などにはなんの興味もない――と言ったほうが正解のようだ。
そんなある意味、高慢な態度とも言えそうなフェニックスが目指している先は明らかに、誰もが生息地と予想していた根子岳の山頂だった。
阿蘇山一帯に広まっていた噂は真実だったのだ。
「あっ! フェニックスさん、待ってぇーーっ!」
矢も盾もたまらなくなったのか、三枝子がフェニックスを追って、一目散に駆け出した。これは先ほど、イヌワシが撃たれたときと、ほとんど同じ状況。すでに三枝子の俊足を思い知らされている清美や孝治たちも、再び慌ててあとを追い駆けた。
「わわっ! また走らされっとかぁーーっ!」
「うわっち! こっちがたまらんちゃあーーっ!」
全員そろって溜口{ためぐち}を吐きつつ、全力で三枝子を追い駆けた。
それでもたちまち、距離を引き離される結果は、これまた先ほどとまったくいっしょ。しかし今度は、フェニックスという共通目標があるのだ。これならば闇雲に走っても、三枝子とはぐれる心配はないだろう。
「くそぉったれぇ! こげん走らされるんやったら、きのうは飲むんやなかったけねぇ!」
ブツクサと文句を垂れているとおり、荒生田は確かに飲んでいた。それに加えて、孝治から嘘の記憶をすり込まれているサングラス😎野郎が全力疾走で走りながら、ご苦労にもひとりで勝手に悔やんだりもしていた。 (C)2013 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |