『剣遊記超現代編T』 第三章 愛(?)と野望(?)の協奏曲{コンチェルト}。 (7) 「えーーい! まどろっこしい! 早く交渉せんかぁーーっ!」
「「「「うわっち!」」」」
元孝治たち四人、全員床から飛び上がって驚いた。このときいきなり、中原とかいうカメラマンが吠え立てたからだ。それこそなんの予告も脈絡もなしで。
驚きの四人に構わず、中原が荒生田に詰め寄った。
「荒生田さんも話がまどろっこしくて、聞いとってイライラしてくるわい♨ もうあとはおれがモデルになるよう説得するから、君たちは引っ込んでいたまえ⛑⛔」
「ゆおーーっし! 中原さんがそこまで言うなら、ボクもお手並み拝見とさせていただきましょうかね☻」
カメラマンが出しゃばってきたにも関わらず、荒生田はなぜか、余裕の構えを崩そうとはしなかった。反対に、もうひとりいる荒生田の同僚とやらは、もろオタオタの顔になっていた。
「な、中原さん……そのぉ……モデルの交渉は優しく、そして穏便に行きましょうよ♋ 鞘ヶ谷先生たち……ビックリしてますからぁ……♋」
そいつが言うとおり、元孝治たち四人は全員、今も瞳が真ん丸の思いになっていた。なにしろ突然、初めは紳士的だと感じていたカメラマンが、急に鼻息も荒く吠え立てたものであるからして。
すぐに治代は、友美にそっとささやいた。
「ずいぶん骨のあるカメラマンやねぇ♋ それはそうとして、今、一応中原さんを止めに入ったの、いったい誰? この会社の人なんやろうけど、なんか三ヶ月ぶりに見る顔なんよねぇ✐⛐」
これにも友美は、四人全員には聞こえるような、小さな声で教えてくれた。
「あの人もわたしの同僚で、牧山裕志{まきやま ひろし}さんっていうの✑✒ 言ったらなんだけど、荒生田さんのグループの一員みたいなものね☹」
「つまり……子分みたいなもんやね☻」
孝乃が腕組みをしてつぶやいた。この間にも中原と荒生田のやり取りは続いていたのだが、その両者ともに、急に元孝治たち四人の方向に顔を向けた。
「「「「うわっち!」」」」
孝江、孝乃、治花、治代は、これまた同時に驚きの声を上げた。その理由はケンカをしているように見えていたふたり(荒生田と中原)が、まるで結託をしたかのようにして、そろってニヤリ顔になっていたからだ。
「あっ……なんか話が着いたみたい☠」
治花が口をポカンとさせた。残りの三人も、同じ気持ち。そこへ荒生田と中原のコンビが寄ってきた。やはりなにかが決着をしたようだ。
「まあ、きょうは話を急に持ってきたもんだから、君たちがとまどうのも無理がないだろうな☻ 返事はまたの機会でいいから、しばらく考えていてくれたまえ☕ もっともこの中原カメラマンも、一度決めたら一途なところがあるから、なるべく早めに返事をしてくれたほうがいいと思うからね⛑」
「そのとおり! おれは簡単にはあきらめんからな✊」
本人たちは、固い意志を見せつけたつもりであろう。だけど荒生田と中原の不退転発言で、元孝治たち四人の背中に、冷たい氷河がドドォーーッと流れ落ちていった。 (C)2017 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |