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『剣遊記超現代編T』

第三章 愛(?)と野望(?)の協奏曲{コンチェルト}。

     (6)

「いやあ、写真集って言っても、アイドルの水着姿の写真集だよ☻ 今はデビューほやほやの新人でも声優さんでも、可愛い娘{こ}はみんな、自分から進んで水着になってくれる時代だからさぁ☞」

 

「水着ねぇ……☁」

 

 孝乃はもちろんだが、孝江も治花も治代も、困惑している顔付きは、四人とも見事に同一していた。

 

 つい三ヶ月前までの男時代(?)、確かに孝治は新連載作品の資料的必要性から、若い女の子のタレント写真集などに、大きな関心を抱いていた時期もあった。

 

 無論ヌード写真集も例外にあらず。

 

 しかしまさかその三ヶ月後に、自分自身がその対象となる未来など、いったい誰に予想ができるであろうか。

 

「君たちなら売れる✌ ずえったいに売れる✌✌ なんと言っても四人の四つ子の美人姉妹で、しかも現在売り出し中の新鋭漫画家なんだから、話題性もこれ以上はないくらいに完全過ぎるってもんだよ

 

「あ、あのぉ……ちょっと待っていただけますか?」

 

 荒生田ばかりが一方的にベラベラとしゃべり続けるので、元孝治たち四人の頭の中は、全員パニック状態と化していた。そこへようやく、治花が口をはさめたのだが、それでも荒生田は強引そのもの。

 

「オレ……いやボクはこれでも未来出版の中ではけっこう顔が利くほうだから、社長にもボクのほうから話を通しておくよ だから君たちはなんにも遠慮することなく、この話に乗ってきてほしいんだけどなぁ

 

 なんだか思いっきりに、胡散{うさん}臭さ丸出し。これでは二の足を踏むほうが、大いに当たり前的な話の流れであろう。

 

「ん?」

 

 このとき孝江は気がついた。今になって――とも言えそうだが、荒生田のうしろには、ふたりの男性が控えていた。それも三ヶ月前に焼き肉店の前で荒生田がKOされたとき、いっしょにいた男たちである。ふたりとも現場が現場だっただけに妙に印象深く記憶に残っていたのだが(もともと忘れっぽいくせに、おまけにお酒が入っていたにも関わらずだから、意外な記憶力の発揮といえる)、右側のひとりは正装(背広とネクタイ。色がどうでもよし)をしているので、どうやら荒生田の同僚らしかった。でもって左側のもうひとりは、パーティー会場に合ったTPOの背広姿ではなく、茶色のコートにGパンを履いた、とても自由そうな服装をしていた。

 

 孝江はこっそりと、友美に訊いてみた。友美もそっと、四人のテーブルまで戻っていたのだ。

 

「あの、荒生田さんのうしろにおる背広じゃない格好の人……誰?」

 

 この問いに友美は、失礼のないよう遠くのほうから眺めて、小さな声で答えてくれた。

 

「プロのカメラマンの中原隆博{なかばる たかひろ}って人ね☢ 荒生田さんとコンビを組んで、写真集をいろいろ成功させてるプロの人よ♐」

 

「プロのカメラマンけぇ……なら写真撮られてもええかもね♪」

 

「おっと♋」

 

 ちょっとビックリの孝江。その孝江と友美の話に入った孝乃は、やや前向きな気持ちになっていた。たぶん頭の中では、自分自身のビキニスタイルが浮かんでいるのだろう。これに友美は、孝乃の左の耳に、そっとささやいた。

 

「言っとくけど、本業はヌード写真なのよ☻ それでも良ければ、わたしも賛成してあげるけどね✌」

 

 孝乃は慌てて、頭を左右にブルルと振った。

 

「うわっち! まだまだそげな度胸なかっちゃよ!」

 

 さらに友美が、意地悪そうに付け加えてくれた。

 

「とにかく気をつけるのよ 荒生田さんが中原さんを連れてるってことは、かなりに本気ってことだから☠☢


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