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『剣遊記超現代編T』

第三章 愛(?)と野望(?)の協奏曲{コンチェルト}。

     (2)

 孝江と同じテーブルには涼子だけでなく、担当記者の友美も同席していた。彼女は元孝治たち四人の担当として、孝江たちのこの場でのフォロー係も勤めていた。また友美は無用な騒動に備えて、この場ではあまりお酒を飲まないようにも心掛けていた。だからここでは、涼子と同じようにして、コーラやウーロン茶での乾杯を行なっていた。だけど元孝治たち四人の周りはそれぞれ完全に黒山の人だかりとなっているので、今しばらくは口を聞くどころか、近づくことさえもできない状態が続きそうだった。

 

「仕方ないわよねぇ☻ 編集部の社員ならともかく、漫画家では鞘ヶ谷先生たちしか、女の子がいないんだから☺⛑

 

 その友美が会場の様子を眺めつつ、ポツリとささやいた。もっとも先ほどから兄たち――もとい姉たちと話せない状況ならば、涼子もいっしょと言えた。

 

「こげんしてみたらこのパーティー会場内って、完全にお姉ちゃんたちの周りばっかり、見事四箇所に分裂してるのよねぇ 漫画家の人って、やっぱり可愛い女の人に弱いとやろっか?

 

 これに友美が、くすっと微笑んだ。

 

「まあね、確かにどの漫画家さんも、スタジオはほとんど同じ男性ばかりが多いものだから、中には例外もあるけど、ほとんどはなぜか女の子日照りになる人って多いわねぇ

 

「するとその点で言えば、おれたちは幸福者ってわけですな☻」

 

 途中からいきなり、和布刈が会話に乱入した。

 

「あら? あなたたちは先生の周りにいないの?」

 

「ほんと、いつもならお姉ちゃんたちのボディーガードしてるのにねぇ

 

 不思議がる友美と涼子に、和布刈はかんらからからと笑ってみせた。

 

「いやあ、おれたちはいつも先生たちといっしょに仕事してるから、たまには別のスタジオの同僚たちにも、先生の魅力をたっぷり見せてあげるべきですよ✌ だからほら、砂津先輩も枝光先輩も井堀のやつも、ここでは遠慮してバイキング料理を食べるほうに専念してますからねぇ

 

 かく言う和布刈の両手には、バイキングのテーブルで集めたのであろう。二枚の大皿に、チキンの唐揚げやスパゲッティなどが、ごちゃ混ぜでドカンと盛られていた。

 

「それもそうっちゃねぇ♐」

 

 かなりに前向きである和布刈のセリフに、涼子も大いに賛同する気となった。

 

「まあ、この前の焼き肉屋のときみたいに騒動が起きなきゃいいけどね☻」

 

 友美も苦笑気味なため息を吐いていた。


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