『剣遊記 番外編X』 第二章 超獣使いとゴウマン男。 (9) おまけでさらに、追い討ちをかけるような話の展開。
「ゆおーーっし! 決まったっちゃあ!」
静香よりも、もっと悪い選択をするに決まっている荒生田が、街道の先頭を進みながらで、なにかを決断したようである。
「き、決まったって……先輩もなんかですけぇ……?」
もはや恒例。裕志の恐る恐るであった。これに対する荒生田の返答は、裕志の予想の範疇を、『やや』であるが超えた次元に達していた。
「ゆおーーっし! おうよ! 正義のために戦うっちゅうてもなぁ、そげんいつもかつも悪の敵が都合良う出てくれるとは限らんちゃけ、やけんそん暇んときに、バルキムに道路工事っとかビルの建設っとか手伝わせて、それでガッポリ稼いでもらうっちゃねぇ✌」
「……ちょ、超獣ば、そげんこつに使うとですけぇ……♋」
裕志、絶句。案の定だとは思っていたのだが、バルキムを自分の思いどおりに利用しようという点では、荒生田も先ほどの静香と大差なし。
いや、それ以上につまらない使用法と言えたりして。
とにかくこれでは、バードマンの女戦士もサングラスの先輩も、一ミリも相違なしの傲慢そのもの。少々話がみみっちい点も、完ぺき同じと言えるのかも。
裕志はこの時点で考えた。もしかするとこんふたり(荒生田と静香)って、縁は薄いけど案外似た者同士ではなかっちゃろうか――と。
「そ、そげん言うたら……これが『こじ付け』っちゅうのはわかっとんのやけどぉ……荒生田先輩の名前は『かずし』やしぃ、これば引っ繰り返した『しずか』になるんちゃよねぇ……でもなるほどぉ、魚町先輩が静香ちゃんから逃げ回る気持ち……今んなってなんとのうわかるような気がしてきたっちゃよ♋」
「なんがわかる気がしたんかい?」
「わわっ!」
裕志はつい無意識でつぶやいていた。そこへ当の静香が聞き耳を立てたので、思わず仰天丸出し。しかしここでも、真に幸運な話(つぶやきの内容を知られたら、きっとただでは済まなかっただろう☠)。街道の先のほうから大勢の人たちが我さきにと、こちらへ向かってどっと押し寄せてきたのだ。 (C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |