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『剣遊記 番外編X』

第二章 超獣使いとゴウマン男。

     (8)

「う〜む……✍✎」

 

 そんな一行の先頭に立つ荒生田であった。ところがこのサングラス😎戦士は街道を進んでいる間中、歩きながらで両腕を組み(これってけっこう歩きにくい)、なにやら思案に暮れているらしかった。そのサングラスの背中をうしろから眺めつつ、静香がそっと、小声で裕志に尋ねた。

 

「ねえ、荒生田さん、さっきからなんから考えごとに熱中してるみたいなんだけどぉ、いったいなに考えてんのか、わかるかい?」

 

「う〜ん……そうっちゃねぇ〜〜☁」

 

 確かに不審丸出しな荒生田先輩であった。しかしそこは、長い後輩生活の賜物。裕志は先輩の頭の中が、なんとなくだが、一応見通せるような気がしていた。

 

「……ぼ、ぼくが思うにはぁ……なんやけどね✍」

 

「……思うにはぁ?」

 

 静香の瞳が、裕志の顔に集中した。裕志は内心でドギマギしながら、恐る恐るの口調で答えてやった。

 

「そ、そのぉ……バルキムばうまいこと利用ばして、またみんなん前で目立つことばしよう……っち考えとるっち思うっちゃよ✈ なにしろ先輩っちきたら、とにかく自己顕示欲の塊みたいな人なんやけ、周りからの注目ば集めるんが大好きな性格なもんやけねぇ……✐☢」

 

「それって本当に自己顕示欲ねぇ……☁」

 

 裕志の説明を聞いた静香の顔は、このときなにかが、ふっと浮かんだように見えていた。また、実際にそのとおりだった。

 

「つまりぃ……荒生田さんは到津さんが言ったとおり、超獣使いになった裕志さんにあれこれたかってバルキムにどんな風に大活躍させようかって、なっから考えてるってわけなんさぁ✌ それならあたしにだって、やればできることなんのぉ☻」

 

「えっ? それってどげんこと?」

 

 何気ない感じである静香のセリフだったが、それが妙なトゲとなって、裕志の心臓にブスッと突き刺さった。

 

 それも悪い予感の典型として。

 

(今の静香ちゃんの言い方、なんか先輩とおんなじモンば感じるっちゃねぇ……☁)

 

 そんな風で戦々恐々の心持ちでいる裕志に、静香が明朗快々で答えてくれた。

 

「簡単なことだがね☻ あたしも超獣使いの裕志さんにお願いさして、バルキムにいろんなことやってもらうんだがね☆ そうだ! 進一さぁもバルキムの大きな体を見たらまあず観念しちゃって、あたしから逃げるの、おいたにしてくれるかしら?」

 

「そ、それはちょっとぉ……でたん危ないことやっち思うっちゃよぉ……そりゃ確かに魚町先輩かて、絶対にバルキムには勝てんっち思うっちゃけどぉ……♋」

 

 バードマンの女戦士である静香の、かなりに危険な思惑。半分予想していたとは言え、裕志の背中を、戦慄の氷河が大雪崩となって駆け抜けた。


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