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『剣遊記 番外編X』

第二章 超獣使いとゴウマン男。

     (5)

「ゆおーーっし! やっぱそうけぇ☀」

 

「な、なんが『やっぱそうけぇ☀』なんですか?」

 

 周辺にもうもうと土煙が舞う中だった。辺りの埃など構わず高笑いの荒生田先輩に、裕志は内心ビビりまくりで尋ねてみた。

 

 その裕志に、荒生田が応えた。

 

「裕志、おまえ正義の味方になるっちゃよ✌」

 

「はえっ?」

 

 いきなり訳のわからない妄言をほざいて、サングラスの戦士が後輩の魔術師を、思いっきりに大困惑させた。

 

「なに言ってんだがね、あんたって人はぁ……?」

 

「まあまあ✌」

 

 横から口を出した静香には、ニヘラ笑顔を向けるだけ。荒生田の勝手なおしゃべりが続いた。

 

「一回言{ゆ}うただけじゃわからんけ? おまえがこんバルキムば使こうて、正義のために戦えっちゅうとばい☜ オレはガキんちょのころから、伝説にようある正義の味方の隊長役に憧れちょったと☻ 正義の味方ばうしろからアシストしちょう頼もしか『おやっさん』役にやねぇ♐ やけんオレがおまえばアシストして、いろいろ助けてやるっちゃよ✈」

 

「じょ、冗談やなかですよ!」

 

 裕志は大慌てになって、頭を横にブルブルブルと振った。

 

「へ、変な魔術師から勝手に研究材料にされてただでさえ落ち込んじょるのに、そげな変なこつ言わんでほしかですよ☢ それよかこんバルキムば、これからどげんしようかって悩んじょるのにぃ……☁」

 

 ところが荒生田のツラの皮は、とにかく厚い!

 

「おまえの悩みなんち、小せえ小せえったい☻ それよか正義と真実と人類の平和のために、日夜戦う大超獣♪ これこそ男の夢とロマンと空想の大きな実現やなかね☀ とにかくこれにて決定っちゃ✌」

 

「………………♋」

 

 けっきょく身勝手極まる妄想のほざきまくり。これ以上の有無を一切言わせず、裕志に自分の願望を押し付けてしまう荒生田。先輩への従属意識が骨の髄からDNAまで沁み渡っている後輩魔術師の裕志に、もはや逆らう術も根性も、まったく存在しえなかった。


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