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『剣遊記Z』

第一章  珍客万来。

     (9)

「はい、どうぞ♡」

 

「通ってよか⛐」

 

 そんなこんなで、美奈子一行は北九州市の城門に、ようやく到着。門番の衛兵に通行証を差し出して、美奈子、千秋、千夏の三人は市内に入った。

 

 このとき少しだけ気になって、美奈子はうしろを振り返ってみた。城門では中原も彼女たちと同じようにして、自前の通行証を衛兵に見せていた。

 

 放浪の画家を自称するだけあって、その辺りの手順は手慣れているようだ。

 

(……あの人……ほんまにうちらのあとを追いよんやなぁ☁)

 

 種は自分で蒔いたようなものだった。だが中原のある意味的なしつこい執念に、美奈子は今さらながら、背中に大きな戦慄を感じていた。

 

 信念が強いと言えば、まさにそのとおりなのであろう。ただし、その行動っぷりを逆から見れば、ただのストーカー的傍{はた}迷惑である場合が多いもの。

 

 今の美奈子の思いを他人から言わせれば、単なる自意識過剰とされるかもしれない。それでも美奈子は、やはり最悪の状況を恐れていた。

 

 ついでに次のような言葉も、美奈子は思い出した。

 

(真の芸術家はんは自分がほしがるモンを求めはるためには、どないな手段も厭{いと}わへん……って聞きますさかい、あの人もそないな類{たぐい}のお人なんやろうなぁ……☠)


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