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『剣遊記Z』

第一章  珍客万来。

     (6)

「それではまず、占いの期限指定から始めさせてもらいますえ☺✌」

 

「きげんしてい?」

 

 早速商談(?)を切り出した美奈子に、画家がいぶかしげな顔を向けた。

 

 期限指定とは、また聞き慣れんこと言うばい――そんな面持ちであった。しかし美奈子は画家の顔などには構わず、対照的に涼しい顔付きのつもりで説明を始めた。

 

「はい、期限指定には『上』『中』『下』『並』とおましてやなぁ、さらに特典で特上も用意してまんのや✍」

 

「もうちょい、わかりよう話してくれんね✑✒」

 

「はい、具体的に言いましたら、『並』はきょう一日だけの運勢を☜ 『下』は一週間だけ☝ 『中』は一ヶ月☞ 『上』は一年分☟ おまけで『特上』やったら、一生死にはるまでの運勢を占ってあげまんのやでぇ♡」

 

 ついでに美奈子は、内心で付け加えた。ペロッと舌を出す気持ちで。

 

(少し脚色もやりまんのやけどね♡)

 

 もちろん美奈子の本心に、気づくはずもないだろう。ベレー帽の画家が、納得の顔でうなずいた。

 

「そげんこつねぇ♥ 当然上になるっちゅうほど、値が張るわけったいね☢」

 

「は、はい……まあ、そうなりまんがな……☠」

 

 痛い所を突かれ、美奈子は笑顔が引きつる思いとなった。そこへ画家から、返答が戻った。

 

「それやったら『並』でよかばい♐ おれはきょうだけ、このあとなんばしたらよかか、それが知りたいだけやけね✈」

 

「……そ、それで、ええんでっか?」

 

 それでは稼ぎになりまへんで――そんな本音をぐっと堪え、美奈子のほうから再度尋ね返した。これに画家は、平然とした顔付きで答えた。

 

「それでよか✌ おれが好きにしとう格言っちゅうのは、『明日は明日の風が吹く✌』やけねぇ✍」

 

「は、はあ……☁」

 

 誰もそないなこと、訊いてまへんで――などと、おだやかではない心中を極力顔に出さないようにして、美奈子は占い料――『並』の値段――金貨一枚だけを受け取った。それからテーブルの上で、いろいろな絵模様が描かれているカードを、素早い手さばきで並べ上げた。


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