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『剣遊記V』

第五章 地下迷宮の捕り物帳。

     (13)

 問題の肖像画のモデル――涼子が、ようやく現場――地下室の広間に到着した。それはそれでけっこうなのだが、現場は衛兵隊と怪盗団が両者入り混じって、大攻防戦の真っ最中。これでは足元にいる三毛猫など、誰も目を向けてくれるはずがなかった。

 

(もう! これじゃ孝治も友美ちゃんも、どこにおるんかいっちょもわかんないじゃない!)

 

 つい憤慨してしまう涼子であった。だけどこのまま、ジッと傍観者でいるわけにもいかなかった。

 

(そうたい! ここにあたしの絵がきっとあるとやけ、この隙に探しちゃおっと!)

 

 結論としては、一応正しいのだろう。とにかく前向きな行動を考えて、三毛猫(朋子)に憑依中の涼子は、隠れ家のさらに奥へと足を向けた。

 

 ただし、どこをどのように勘違いしたのやら。あとでわかった話であるが、それは孝治と友美、さらに美奈子と弟子たちがいる部屋とは、まったく見当違いの方向だったのだ。


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