『剣遊記V』 第五章 地下迷宮の捕り物帳。 (12) 「……こ、これって……全部怪盗が盗んだ物け?」
孝治は部屋いっぱいある盗品の山に、まずはいつもどおりのリアクション。思わずで仰天した。
「……ほんなこつ、凄かぁ〜〜☆」
友美もまた瞳が真ん丸なので、心境は孝治と同じようであった。
「ほ、ほんとっちゃねぇ〜〜♋」
美奈子の案内――コブラが千秋の首に、襟巻き型で軽く巻いたスタイル。さらに頭を伸ばして、鼻先で道を教えていた――で、目的の部屋とやらまで来てみれば、そこはまさにお宝の山だったのだ。
しかも孝治と友美の驚きの理由は、盗品の量だけではなかった。友美がまず、盗品の中から最も探し求めていた物――涼子の肖像画を見つけ出した。
「ああ、あったぁーーっ! これで涼子も喜ぶっちゃねぇ!」
「えっ! 『りょうこ』って誰やねん?」
「あっと!」
ついうっかり内緒ごとを口に出した友美が、慌てて両手で口を押さえた。もちろん真っ先に突っ込んだ千秋を始め、千夏と白コブラ変身中である美奈子も、そろって友美に顔を向けていた。
(おい、まずかばい……☠)
孝治は右ひじで、友美の左脇腹を軽く小突いてやった。それから友美が、かなり苦しい論理のすり替えを言って、この場の空気をごまかそうとした。
「い、いえ……この絵が戻ったら、未来亭のみんなもきっと喜ぶっちゃね……きっと……♥」
しかし、これで一応納得してくれた者は、千夏ただひとりだけ。
「はいそうですうぅぅぅ♡ 千夏ちゃんはぁ、この絵さんを初めて見ますけどぉ、そのとおりお店の皆さぁん、喜んでくれると思いますですうぅぅぅ♡」
危ない危ないと言った感じで、友美が胸を撫で下ろした。ところが白コブラこと美奈子と千秋は、いまだ疑惑の目線で孝治と友美を見つめていた。
ふたりの瞳の刃{やいば}が胸に突き刺さる思いなのだが、孝治もこれ以上、絵について話題として触れないように心掛けた。
(勘が鋭かふたりやけねぇ〜〜✍✎)
無理矢理的な方法は、百も承知であった。ヘビの眼のどこに『疑惑』を感じるかは、この際棚に上げておく。 (C)2011 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |