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『剣遊記超現代編T』

第一章  某漫画家の転換、分裂!?

     (7)

 翌朝である。

 

「ん……あさ……?」

 

 孝治はごくふつうに目を覚ました――つもり。

 

 元より目覚まし時計など、かけてはいなかった。それでも窓のカーテンの隙間から差し込む朝日の光が、疲れて深い眠りに入っていたはずの新人漫画家を、心地良く目覚めさせてくれたようだ。

 

 しかし同時に、違和感だらけの目覚め――でもあった。

 

「あれ? へっくしょん!」

 

 孝治は目覚めの瞬間、強烈な寒気も感じた。それも当然だった。

 

「おれ……裸ぁっ!?」

 

 なぜだか理由がまったくわからないのだが、寝間着を着ていたはずの自分が真っ裸になっている状態に、孝治は意識がはっきりしてから、すぐに気がついた。それもベッドの下、床の上でそのまんま。あまり高くないとは言え、ベッドから落ちても起きないほど、自分は熟睡しきっていた――とでも言うのだろうか。

 

「な……なしてやろっか? べ、別に裸んなって高いとこから落ちるような夢ば見た覚えなかっちゃけどぉ……♋」

 

 とにかく不可解極まる思いのまま、孝治は自分の裸をベッドの右横の小型机に置いてある、正方形の卓上鏡で覗いてみた。

 

 そこで孝治は噴き出した。

 

「うわっち! ぶうっ!」

 

 その鏡に写っていた自分は、自分ではなかったのだ。

 

 確かに輪郭その他は孝治に違いないのだが、昨夜とは明らかに大きく異なっていた。

 

 まずは髪がひと晩で長く伸びていた。両肩よりも下に。

 

 また全体的に骨ばって筋肉質だった体格部分が消え、さらに両手と両足も、きのうよりもずっと細く華奢な感じになっていた。

 

 なによりも巨大な変化というか特徴が、ふたつあった。胸が異常に大きく、前にふくらんでいた。その次はなんと、極めつき。一番大事なモノが――無かった。

 

「お、女……☁?」

 

 今の孝治には、このひと言しかつぶやけなかった。ついでに今になって気がつけば、声質もかなりに(2オクターブほど)甲高くなっていた。

 

 それから孝治は、自分のふくらんだ胸に、恐る恐る両手で触れてみた。

 

 プニュッとやわらかかった。しかもけっこうな重量がありそうだ。

 

「な、なして……おれん体にこげなもんが……☁」

 

 さらに、はしたない格好を自覚しながら、股間も鏡に写して覗いてみる。

 

「な、な、な……やっぱ完全にのうなっとう……☁☠」

 

 孝治は真っ裸のまま、その場の床に、ペタンと尻を落とした。

 

「ふぅ……☂」

 

 ため息を吐いた。それから室内を見回した。

 

「うわっち!」

 

 そこで初めて気がついた。変化が起きた者は、自分ひとりではなかったのだ。よく見ればベッドの上が、何人かが寝ている感じでふくらんでいた。それも明らかに、人が頭から掛け布団をかぶり込んでいる状態で。そのため孝治は掛け布団を取られて、床に裸でいる状態となっていたらしいのだ。

 

 よくこれで風邪などを引かなかったものである。

 

 しかも――であった。なんとひとりの女性が布団から顔だけを出して、スヤスヤと静かな寝息を立てていた。

 

 その女性はたった今鏡で見たばかりの、(女性化した)自分自身そのものだった。

 

「おれがふたり……やっぱ女になっとうばい……☢」


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