『剣遊記 超現代編T』 第一章 某漫画家の転換、分裂!? (4) チナがやはり音どころか気配も姿も無く、孝治の部屋に侵入した。
『う〜ん、とってもイケメンなお兄ちゃんですうぅぅぅ♡♡』
謎の侵入者から見られているとは知らない孝治は、このときまだ起きていた。しかも先ほどとは別の愚痴をつぶやき中だった。
「……それとなんやけどぉ……もうすぐアシスタントが来てくれるっちゅうたかて、今のおれって、ひとつん体じゃとても足りん状態やけ、おれが少なくとも四人ぐらいおったら、仕事もバンバンはかどるかもしれんばい☻☻」
まるで誰かに聞いてもらいたいような愚痴である。しかも今現在の場合、しっかりと聞いてくれている者がいるのだ。
『きゃん☆ 四人になりたいですかぁ? これはチナちゃんもぉビックリさんですうぅぅぅ☞☛☞』
チナの驚き顔を、孝治はたぶん、永遠に気づかないままだろう。
「ほんなこつもう寝らにゃ、あしたはほんなこつヤバいけねぇ☢」
仰向けの体勢の上から掛け布団をかぶり直し、孝治はベッドの中に潜り込んだ。同じ部屋に目には見えない少女が存在していようとは、知るよしなど一切あるはずもなく。
『これもぉミーナちゃんにぃ、ご報告しないといけませんですうぅぅぅ✈』
まさに新しい発見をした思い。チナは急いで窓ガラスを通り抜け、ミーナとチアが待っている空間まで、ひとっ飛びで戻っていった。
なお、賢明なる読者諸君はすでにお気づきであろうけど、チナだけはなぜか、姉のチアや師匠であるミーナと違って、関西訛りになっていない。この謎は今後のストーリーの展開とはまったくの無関係なので、このままほっておくことにする。 (C)2017 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |