『剣遊記超現代編T』 第一章 某漫画家の転換、分裂!? (22) 同時刻である。地上の一般人たちからはまったく姿の見えない万願の女神――ミーナと双子の弟子たち三人は、今朝も早くから、日本の上空四千メートルを飛行中。でもって現在、富士山の頂上近くを遊覧飛行している最中なのだが、眼下に広がる雄大な風景(箱根、伊豆半島、駿河湾など)を眺めつつ、ミーナが自慢げな口調でふたりの弟子――チアとチナに話し掛けていた。
『どないでっしゃろうなぁ? きのうの夜に女子はんにしてやったお兄はん、あんじょううもうやっとうかいな?』
一応ミーナなりに、孝治に性転換と四分裂の願い(?)を叶えてあげたことを、それとなく気に懸けているようである。実態はよけいなお世話以外の、何モノでもないのだが。
これにチアが、やや空元気な感じの口調で応えてやった。
『まあ、ええんとちゃいまっか☀ ニーちゃんが自分で望んだことやさかい、あとは自力でなんとかするって、チアは思うで♐♠』
今でもチアは、孝治の冗談であるつぶやきを、本気の願いと思っているようだ。また妹のチナも同意見――と言うよりも、かなり無責任的な調子で師匠に応じていた。
『ミーナちゃんはぁ、万願の女神さんのお役目をきちんとやったとぉ、チナちゃんは思いますですうぅぅぅ☀☺ それよりもぉ今はぁ、次のぉ迷える子羊さんを助けるほうが大事さんと思いますですうぅぅぅ☛☚☛』
『そうでおますなぁ♪✊』
こちらはかなり前向きであるが、ミーナも気分そのものは、チナと同様といえた。しかも頭の中身は、次のステップへと移り始めていた。
『うちの大事な使命はチナはんのおっしゃりはるとおり、この世の迷える子羊はんたちを、ひとりも残さんようお助けすることどすえ⛽ ではチアにチナ、これからもっと西のほうへ向かいまっせ☞☞』
『はいな! 師匠✌』
『チナちゃん、どこまでもついて行きますですうぅぅぅ✈✈』
果たしてミーナたちが向かう西の方角で、これからいったいなにが起こるのか。早い話がこれはミーナたち三人の気まぐれによる放浪なので、この後の孝治の展開には、なんの関係もなかったりする。
つまり万願の女神の脳内では、昨日の夜に変身させた漫画家のことなど、とっくに解決済みとなっているわけ。
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