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『剣遊記超現代編T』

第一章  某漫画家の転換、分裂!?

     (21)

 これまた代表するわけではないが、右端に立っている孝江が、いの一番でアシスタント一同へ向けての挨拶を行なった。

 

「お、おれ……じゃなか! あたしたちが、そのぉ……四人そろって鞘ヶ谷孝治なんでぇーーす 実は四つ子の共同作業で漫画ば描いてたの♤

 

 続いて治花も孝江に合わせ、補足の説明を加えた。

 

「そ、そうそう! 実は『鞘ヶ谷孝治』ってのはあたしたちのペンネームであって、四人で協力して漫画を描いてたんでぇーーっす♡☀」

 

「ああ、ビックリした♋」

 

 孝江と治花の苦しい言い訳であった。それでも一応、男たちは納得してくれたようである。中でも一番の年長者である砂津が、大きな安堵の息を吐いていた。

 

「こりゃほんとにサプライズだったねぇ☻ 女流漫画家さんのアシスタントは初めてなんだが、なんだかおもしろい漫画が描けそうじゃないか✌」

 

「どう? みんなビックリしたかしら?」

 

 むしろ先に事情を教えられていた友美のほうが、気を使いまくりの顔をして、四人のアシスタントたちに、恐る恐るの口調で問い掛けていた。

 

「おれはここで働かせてもらいますよ

 

 一番に砂津がうなずいてくれた。

 

「おれも、鞘ヶ谷先生たちに協力させてもらいますね✌」

 

 枝光もニコやかそうな笑みを浮かべ、四人並んでいる孝江、孝乃、治花、治代を、右から順番に見つめ直してくれた。

 

 行動することは、やっぱり誰でも同じ――と言うべきか。とにかく不幸中の幸いとでも言うべきだろう。元孝治たち四人が、本人が思っている以上に可愛い容姿なので、男たちに疑問や不思議の気持ちなど、まったくカケラも生じていないようである。

 

「でも、四人そろって男物の格好してるところが、またなんか新鮮な感じがするんですよねぇ♡」

 

「「「「ははっ……☠☻☻」」」」

 

 続く枝光のかなり誤解的な誉め言葉には、元孝治たち四人はまったく同じ表情になって、全員で苦笑いを返すしかなかった。

 

 それでもまあ、年長のふたり組のほうは、一見だが温厚そうな人柄に、元孝治たち四人には見えていた。ただ問題がありそうな者が、若手のふたりだった。

 

「お、おれもここでアシスタントをやらせていただきます! いや! ぜひ、やらせてください!」

 

「お、おれも! 鞘ヶ谷先生たちに、一生ついて行きますね!」

 

 和布刈と井堀が目玉を血走らせて、ふたりそろって元孝治たちの真正面まで鼻息も荒く、強い剣幕で迫ってきたのだ。

 

「うわっち!」

 

「よ、よろしく……♋」

 

「お願い……☢」

 

「しますっちゃね⛐⚠

 

 孝江、孝乃、治花、治代の順に、半分ビビりながらで、そろってコクリとうなずいた。

 

「アシスタントの皆さん、完全に元兄貴ば、綺麗なお姉さんたちっち信じちゃったみたいっちゃねぇ♐ けっきょく可愛ければ万事OKってことなんやろうけど、こりゃ前途が多難ちゃよ☂」

 

「わたしもそう思う☃」

 

 涼子の小さなつぶやきを耳に入れた友美が、やはりのため息混じりで応えた。その思いであれば、元孝治である四人の乙女(?)たちも、胸の内は同じであった。

 

(おれたち……ほんなこつこいつらの言うとおり、一生四人の女性のままなんやろっかねぇ?)

 

 ここは治代に代表をしてもらって、心の声を表現してみた。


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