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『剣遊記超現代編T』

第一章  某漫画家の転換、分裂!?

     (19)

 友美が男性ばかり四人を、孝治のマンション十階まで連れてきた。

 

「いいかしら? 実はちょっとしたサプライズを、皆さんに用意してあるんだけどぉ……?」

 

「サプライズぅ? 望むところですよ、浅生さん✌」

 

 などと威勢良く友美に返事を戻した男は、出版社からの要請で本日から孝治のアシスタントを務める予定の、和布刈秀正{めかり ひでまさ}という将来の漫画家志望者である。

 

 彼の他にもやはり、将来のプロ漫画家志望である(あるいは『あった』)ヤローどもが三人。名前は枝光正男{えだみつ まさお}、砂津岳純{すなつ たけずみ}、井堀弘路{いぼり ひろみち}の計四名。

 

 年齢で言うと砂津が二十三歳で一番の年長者であり、続いて枝光が二十一歳。井堀が十九歳。和布刈のみがちょうど二十歳で、唯一孝治と同年齢になっていた。

 

 このメンバーの内情をくわしく説明すれば、割と若手のほうである和布刈と井堀は、いつの日かのプロデビューを目指して、日夜アシスタント修行に励んでいる――と言ったところ。反対に年長者組である枝光と砂津は、漫画業界の苛烈ぶりに一歩も二歩も引いた気持ちとなっており、今やアシスタントを生業にして、日々の生計を立てていた。

 

 このようにしてメンバーがそろっているところで、友美が孝治の部屋のドアホンに声をかけた。

 

「ごめんください、浅生です……☁ そちらの用意は、よろしいでしょうか?」

 

「そちらの用意?」

 

 頭に『?』マークを浮かべる和布刈の耳に、ドアホンからは男性の声ではなく、可愛らしい女の子の声音が聞こえてきた。

 

〈あっ……どうぞ♋ 部屋はなんとか片付いてますので

 

 返事は涼子の声だった。

 

(片付いてるって……まさか、どんな準備なのかしら?)

 

 初めに自分自身がサプライズをされて真相がわかっているものの、友美は涼子のセリフの意味を、まるでつかむことができなかった。とにかくそれでも、疑問と不安を無理矢理的で胸の奥へと仕舞い込み、友美は部屋のドアノブを右手で回して、室内に顔を入れてみた。

 

「失礼しまぁ〜〜す☁ お約束のアシスタントの皆さんを連れて参りましたぁ……☁」


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