『剣遊記12』 第一章 戦士はつらいよ、望郷篇。 (13) 「とにかくゆくし(沖縄弁で『嘘吐き』)でも痴漢でもなけりゃ、おれもマジムンみてえにたっくるさりんどはしねえ☻ まあ、おれも今は裸ででーじなとこだから、びんない待ってな☛」
そう言って、相変わらず大事な二箇所を両手で隠したままである短髪の女性が(当然過ぎる行ないだと思う)、泉でおとなしく待っている象のほうへと顔を向けた。
「ちょっと待ってばぁよ、ラリー♡」
それからついでであろうか。荒生田と裕志にも振り向いた。
「ちょっとくにさー、象のラリーを見ていみそーれ☞ おれちょっと、服着てくるばぁよ✈ そう言うわけやしがラリー、ちょっと待ってばぁよ☺」
彼女の言葉に出てくる象の『ラリー』とやらが鼻を高く振り上げ、パオーーと、ひと際高い吠え声を上げた。
これでどうやら、ラリーの返事(?)を得たようだ。彼女は荒生田と裕志に日焼けをしている背中とお尻(丸出し)を向け、それから駆け足で、泉の奥にある林の中へと消えていった。
「うぷっ!」
そのような状況なものだから、只でさえ先ほどから鼻血を垂れ流し状態であった裕志がとうとう、草むらから泉の水の上に、ジャバンッッと倒れてしまった。
この情けない後輩の無様を見ていた先輩の荒生田が、ここでただひと言。
「ちぇっ☠ 何歳になったかて、やおない野郎っちゃねぇ☠ やけん本モンの彼女がひとりもできんっちゃよ☢」
そんなふたりの真横では、象のラリーが自分の鼻で泉の水を勢いよく吸い上げながら、いかにも野生っぽく水浴びを続行していた。ところが荒生田は、この象の主人であるらしい女性の裸ばかりを三白眼で追っていて、日本ではとても珍しい存在である象に、ほとんど関心を示していないのだ。
この男の頭の中は、スケベ心が中心。好奇心や探究心など蚊屋の外。常に頭の中の、ほぼ百パーセント以上を占めている。 (C)2014 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |