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『剣遊記超現代編T』

第二章 男一名イコール美女四名?

     (9)

 元孝治たち四人と涼子がいつも利用しているスーパー銭湯は、今住んでいる所の隣りの町――郊外に去年オープンしたばかりの、半レジャーランド型公衆浴場である。

 

 店内には大型浴場以外にも、ジャグジー、サウナから砂風呂までが併設され、週一で火曜日が定休日となっている。

 

「ほ、ほんなこつ……おれたち……やなか、あたしたちもここに入るとやろっか?」

 

 正面出入り口の前に立ち、今さらになって治花は怖気づいていた。

 

「こげなときにこげなこつ言うのもなんやけどぉ……♠」

 

 孝江は孝江で、ある種の覚悟を決めていた。

 

「おれ……あたしたちって、ひとりだけの女体化やのうて四人に分裂して、実は正解やったんやなかろっかねぇ☻ 昼間にランジェリーショップに入ったときもそうやったんやけど、ひとりで女性専門の場に入るよか、こげんして四人になっていっしょに入れるけ、なんか不安よか度胸のほうが大きいような気がするっちゃね

 

 姉――長女から四女までの順番はいまだにできていないのだが――のセリフを耳に入れ、今や一番の末っ子となっている涼子が、これにうんうんとうなずいた。

 

「確かにそんとおりっち、あたしも思うばい✍ なぜ四人になったのかは永遠の謎っちゃけど、こげんして四人になっとうけ、仲間意識で『赤信号みんなで渡れば怖くない✌』になっとんとちゃうね?」

 

「絶対そんとおりっちゃよ☞」

 

「うわっち! 完ぺきに治っちょう!」

 

 孝乃が驚いたのも無理はなし。人様から裸を見られた衝撃より立ち直りかけている治代が、今や涼子の意見に賛同するほどとなっていたからだ。

 

「あたしら、もしひとりやったらほんなこつ、急に女に変わったショックで、今ごろ熱出して寝込んどるに決まっとうけ♋ 少なくともこげんして表に出る度胸がついとんのも、ひとりで不安定な心境の中、なんでもかんでもひとりでせんといけんところを四人で協力してできるから、っちゅうとこやろうねぇ☻」

 

「演説はええけ、早よお風呂に入るっちゃよ

 

「うわっち、ごめん☻」

 

 孝江がストップをかけたので、治代の話は、これにて中断。一同五人は足並みをそろえて、スーパー銭湯入り口の暖簾{のれん}をくぐった(正しくは自動ドア)。


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