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『剣遊記超現代編T』

第二章 男一名イコール美女四名?

     (8)

「は、裸ば見られた……♋☠」

 

 ランジェリーショップの店内限定とはいえ、人前で真っ裸姿を公開する破目となった治代は、縦線を何百本も走らせた青い顔になってうつむいたまま、今もひとりブツブツとつぶやき続けていた。

 

 とにかく新しい下着類、さらに女性用衣服の購入を終え、元孝治たち四人と涼子。お終いまで付き合っていただき、いろいろな助言もしてくれた友美の合計六人は、そろって家路に着いていた。それからマンション近くになって、友美が自宅に帰る話の流れとなった。

 

「それじゃあ、またあした、次の回のネーム打ち合わせに参りますので、きょうはどうもお疲れ様でした☀」

 

「ありがとうございます、友美さん♡」

 

 涼子が真っ先に頭を下げた。元孝治たち四人も声をそろえ、友美の別れの挨拶をした。

 

「「「ほんなこつ、きょうはありがとうございました」」」

 

 実際は、治代がまだ立ち直っていないので、孝江、孝乃、治花の三人だけであった。

 

「裸ば見られた……他人から裸ば……☠」

 

「いつまで青い顔してんのよ☻ 見てくれたんはみんな女ん人ばっかしやったんやけ、そげん気にせんでもよかっちゃよ✌」

 

 涼子がそんな治代の背中を、バシッと右手で叩いた。けっこう大きそうな力でもって。その光景にくすっとした気になりながらも、孝江は何気なく、マンション出入り口にある掲示板に瞳を止めた。

 

「うわっち?」

 

 それには気になる報せが貼られてあった。

 

「うわっち! きょうこのマンション、断水するっちゃね✄ 水道工事するなんち、聞いてなかっちゃよ⛹⚠

 

「あっ、いっけない

 

 涼子も貼り紙を見て、『しまった♋』の顔になっていた。

 

「今になって悪いっちゃけど、朝一番にチラッち見てから、こんこと完ぺきに忘れとったばい☻ お姉ちゃんたち、ごめん

 

 などと両手のシワとシワを合わせてペコペコする割には、涼子の顔に、それほどの反省は見て取れなかった。

 

「ややなぁ……きょう外出したけ、ちょっと汗ばかいとるっちゃよ☹ こげな体で洗わんまま寝るなんち、ちょっといい気持ちせんちゃねぇ☢」

 

 孝乃は不満をあらわに、口を尖らせた。残りのふたりも、うんうんとうなずいた。治代はいまだに青い顔のまま。だけどもすぐに、涼子が右手の指を、パチンと鳴らして言ってくれた。

 

「やったら、いつものスーパー銭湯に行けばいいっちゃけ☀ 別に断水にならんでも、今でも週に一回か二回は行きよんやけね♐」

 

「「「「あっ、そっか☀」」」」

 

 元孝治たち四人の頭にも、すぐにピン💡ときた。このとき治代は、タイミングよく落ち込み気分から立ち直っていた。

 

 それはとにかくとして、孝江がつぶやいた。

 

「これじゃ……きょうはランジェリーショップデビューに続いて、女湯デビューもするわけっちゃね♋ 我ながら目まぐるしい日々の連続ばっかしばい☢」

 

「でも……こん体で男湯に入れるわけなかっち、おれたちかて自覚ばしよんやけ もうこげんなったら毒ば喰らえば皿まで……ってやつっちゃよ

 

 続く孝乃の言わばヤケクソ的な決断に、一同これまたうんうんとうなずいた。

 

「じゃあいったん部屋に戻って、お風呂道具ば持ってこんといけんちゃね☀」

 

 本当にスーパー銭湯に行く展開となった五人姉妹たち(?)。中でも末妹――長女からいきなり五女となった涼子が、なぜか一番張り切っていたりする。


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