『剣遊記超現代編T』 第二章 男一名イコール美女四名? (5) ようやくお目当てのランジェリーショップに着いたものの、元孝治たち四人はその商品量の膨大さに、正直圧倒された。
「に、日本に……こげん女性の下着の種類があるっちゃねぇ♋」
店内に足を踏み入れた治花が、一歩も二歩も引いた気分になってつぶやいた。なにしろブラジャーはもちろん、パンティーにストッキング、その他もろもろ。これらの山の中からいったい、なにをどのようにそろえれば良いものやら。元孝治たち四人には、まるで見当がつかなかった。
「やっぱり、迷ってるみたいっちゃね☻」
涼子がそんな元兄である姉たちのうろたえ姿を眺めつつ、いっしょに店内に入っている友美にささやいた。
「やっぱ、あたしたちで選んでやらんとお姉ちゃんたち、自分ではいっちょも決められん、っち思うっちゃよ✄」
「そうみたいね✐」
友美はそんな元孝治たち四人の困惑ぶりを、少し微笑ましいような顔で見つめていた。
「友美さんって……♐」
笑顔を浮かべる友美に、涼子がそっと右の耳に語り掛けた。
「なんか複雑な心境に、今の友美さんはなっとるんやなか? なんちゅうたかて、女ん子であることに関してはお姉ちゃんたちは新米なんやけ、それがなんだか純粋無垢で、そーとー可愛らしい後輩みたいに見えとんのとちゃうやろっか☻」
友美がさらに微笑みを増した。
「ま、まさかねぇ〜〜☺」
頭を左右に軽く振ったものの、その表情は明らかに、満更でもない心の内を表しているかのようだった。
それはそうとして、元孝治たち四人の下着選びは予測のとおり、かなり難行している様子っぷり。
「もう見てらんない!」
どうやらパンティーとブラジャーの選択に迷っている姉たちを前にして、涼子がその場にしゃしゃり出た。
「お姉ちゃんたち、いつまで悩んどうと!? 色はなんでもええとやけ、さっさと決めっちゃってや!」
「そ、そげん言うてもやねぇ……☁」
孝江が赤いうえに気弱そうな顔にもなって、涼子の前に、両手で持っているピンク色のパンティーを差し出した。
「サ、サイズはこれで良さそうっちゃけど、なんかピンクって、ド派手な色にならんけ?」
「見せちゃって☁」
涼子が孝江の手から、パンティーを強引に取り上げた。その品は女性が履くにしてはむしろ無地で地味な感じがあり、これで悩むほうが(少なくとも女性目線で見る限り)、とてもおかしいようなシロモノといえた。
涼子はピンクのパンティーを両手で持ったまま、眉間に大きなシワを寄せた。
「まあ、女ん子らしいお洒落がようわからんっちゅうのはわかるっちゃけ、とにかく着替え分も含めて数が必要なんばい⛽ やけん早よう試着ばしてこんね♐」
「試着けぇ……☠」
「まっ、避けて通れん道やけねぇ☢☠」
治代と孝乃が前後してつぶやいた。
とにかくそうと決まれば、あとは早かった。
「ほらほら、ほんとはひとり試着したら全員のがわかるっちゃけど、ここは平等に全員で服ば脱いで試着やけね☻ 試着するとこは、あそこみたい⛐」
涼子が元孝治たち四人の背中を押していく先には、ひとり分ずつ仕切られているカーテン式の試着室があった。 (C)2017 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |