『剣遊記超現代編T』 第二章 男一名イコール美女四名? (22) 「うわっち?」
孝江は室内を見回した。残りの三人も、同じ行動を繰り返した。
元孝治たち四人の瞳の下では、気絶している砂津を井堀が背中に手を当てて上半身を起こさせ、それを友美と涼子が介抱していた。また和布刈と枝光も、元孝治たち四人と並んで、隣り部屋の六人とにらみ合っていた。
つまり視界内に、全員がそろっているわけ。
「誰?」
めちゃくちゃ意表を突かれた気持ちになって、孝江はうしろに振り返ってみた。自分の右手をにぎっているであろう者の顔を見るために。もちろん孝乃、治花、治代もそろって、孝江と同じ方向に瞳を向けた。
そこにはサングラス😎の男がいた。それもなぜかニヤついて、前歯をキラリと光らせながらの顔をして。
ついでに言えば、今どき珍しいリーゼント頭。それがまた中途半端な出来でもあった。
そのサングラス男が言った。孝江の右手を離さないままで。
「物書きが手にケガしたら、ただじゃすまんぞ☠ 漫画家はなにがあっても、自分の手を一番大事にしないといけないんだからな☻」
「ん……この人、どっかで見たことあるような……☁」
手をつかまれていない治代が、サングラス男の横顔を見てつぶやいた。この記憶は元孝治たち四人全員、共通して脳内に保管されていた。またサングラス男のうしろにも、ふたりの男が、なんだかオロオロとした顔で立っていた。
「あんたら……どっかで会ったこと……あったっちゃろっか?」
右手をつかまれている孝江が、サングラス男にそれを尋ねようとした。そのときだった。
「関係ねえやつぁすっ込んどれあーーっ!」
またもや恰幅男の右パンチがパコーーンと飛んで、今度は謎のサングラス男が被害者となった。
「ぎゃぼっ!」
けっきょく畳の上でノックダウン。カッコ良く登場したくせに、実にカッコ悪い無様さを見せつけてくれた。 (C)2017 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |