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『剣遊記超現代編T』

第二章 男一名イコール美女四名?

     (21)

「うわあっ! やっちゃったよぉ☠!」

 

「こうなったら先生を守れぇーーっ!」

 

 和布刈が叫び、枝光が立ち上がった。

 

 初めはケンカを他人事として、徹底して不干渉を貫くつもりだった。ところがあまりにも想定外な事態。自分たちが最も大事にしないといけない漫画家先生が、一番にケンカの火蓋を切ってくれたのだ。

 

 砂津、枝光、和布刈、井堀の四人とも、日頃からバイオレンス沙汰とは、まったく無縁な一般生活者である。しかしここまで事態が悪化したともなれば、もはや四の五のと言ってはいられなかった。

 

「先生は奥に入ってくださぁーーい! 浅生さんと涼子ちゃんもね!」

 

 砂津が実に男らしく、元孝治たち四人と隣りの部屋にいた酔っ払いどもの間に立って叫んだ。だがやはり、日頃ペンより重たい物を持たない悲しさ。

 

「この野郎ぉ!」

 

「ぎゃふん!」

 

 六人のヤローどもの中で一番恰幅の良い男から、まともな顔面パンチを喰らってバタンキュー! あえなく気絶の憂き目となった。

 

「あっ! 先輩っ!」

 

 井堀が慌てて、仰向けに倒れた砂津の元に駆けつけた。それを見た(泥酔状態の)元孝治たち四人。怒りで髪を天に逆立てた。

 

 これまた四人そろって。

 

「てめぇーーらぁーーっ! ようも大事なアシスタントにケガばさせてくれたっちゃねぇ!」

 

 孝乃が叫んだ。

 

「こんの野郎ぉ!」

 

 続いて孝江が、砂津を殴った男に飛びかかろうとした。

 

 右腕を大きく振り上げて。

 

 ところがその右腕を、誰かがうしろから、ガシッとつかんでくれたではないか。


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