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『剣遊記超現代編T』

第二章 男一名イコール美女四名?

     (2)

 そこへふたり(和布刈と井堀)にとって、もはや救世主と表現するべきであろう。

 

「皆さぁーーん☀ お疲れでしょうから、コーヒーでもいかがですかぁ

 

 涼子がトレイに八つのカップを載せて、台所から仕事場に入ってきた。涼子は一応大学に通っている学生なのだが、実の兄が今や史上空前的に大変な状況となっているので、しばらく休学して付き添うように決めていた。

 

「「「「おっと……涼子、すまんちゃねぇ☕☺」」」」

 

 元孝治たち四人の声が、本業中でもステレオとなった。

 

「なるほど、やっぱり四つ子ってのは、なにをやるときでも息がピッタリ合うもんですねぇ✐ なぜか理由はわからないんだけど、自動的に以心伝心ができちゃう……と言った感じですかねぇ✐✍」

 

 涼子からカップを受け取った砂津が、感心しながらコーヒーを賞味していた。

 

(うわっち! まずかっ

 

これに孝乃が、内心で苦笑の思いとなった。それからこっそりと、周りの三人(孝江、治花、治代)相手にささやいた。

 

「……注意せんとおれたちって、必ず声が合唱になってしまうっちゃねぇ どげんして注意したらええのかようわからんちゃけど、とにかく注意ばしとこ♋

 

 三人とも静かにうなずいた。治花が言った。

 

「……そんとおりやねぇ☢ でも実行はむずかしいっち思うっちゃよ✄ なんせおれたち、発想も行動も完全に一致しとんのやけ⛐⚠

 

 これまた全員で、うんうんとうなずいた。そのとき完成間近の原稿に手を加えている途中の和布刈が、いきなりで左手を上げた。

 

「先生っ! 今の原稿が完了したら、親睦を深めるためにみんなで飲みに行きませんか✈ これはどの漫画家のアシスタントも、みんなやってることですから☀」

 

「「「「うわっち? 親睦会……ですか♋」」」」

 

 たった今気をつけようとしたばかりなのに、もう四人でステレオをする始末。でもアシスタントの四人は、もはや当たり前の出来事として、まったく気にしていないようだ。ステレオには突っ込まず、和布刈と並ぶ井堀、枝光、砂津も、それぞれ賛同の顔になっていた。

 

「いいですねぇ みんなの団結を深めるためにも、親睦会は早めにやったほうがいいですよ

 

 年長者の砂津が賛成すれば、開催はもう決定されたような話である。今度こそは注意をして、ここは孝乃だけが返事を戻した。

 

「そ、そうですねぇ……行きましょうか、皆さん✈」

 

 続いて治花。

 

「おれ……じゃない、あたしたちそういった席は初めてなんで、とにかくよろしくお願いしますね♥」

 

 孝江と治代も、いっしょにうんうんとうなずいた。気を抜けば四人の発声が必ずステレオとなるので、これはこれでけっこう神経を使う場面ともいえた。


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