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『剣遊記超現代編T』

第二章 男一名イコール美女四名?

     (19)

 宴もたけなわとなったところだった。

 

 楽しくにぎやかに焼き肉を賞味している孝治たちの隣りの奥座敷でも、別のグループがワイワイガヤガヤとやっていた。

 

 だけどその雰囲気は、非常に不穏な空気そのものとなっていた。

 

「なんやとぉーーっ! 文句あんのかぁーーっ!」

 

「うっせえーーっ! ガタガタぬかすんじゃねえーーっ!」

 

 聞きたくもない銅鑼声の連発が、襖{ふすま}の向こうの部屋から、嫌でもこちら側に響いてきた。

 

「お隣さん、あれでけっこう盛り上がってるみたいだな☠」

 

 ジョッキをグイッとひと飲みにしながら、砂津が忌々し気につぶやいた。

 

「とにかくここは関わらんようにしとこうぜ✄ せっかくのビールが不味くなりそうだけどな

 

 枝光も大人の対応で、ここは不干渉に徹する気らしい。

 

「ほんとのケンカにならないうちに、こっちは早めに会計したほうがいいんじゃないですか?」

 

 襖の向こうでいったいなにが起こっているのかわかりようもないが、友美は友美で、隣りの様子をかなり心配しているようだ。この一方で和布刈は、かなりの楽天家であった。

 

「まあまあ、お隣さんとこちらとは全然無関係なんですから、そんなに気にしないで、こっちはこっちで楽しくやりましょうよ☀」

 

 今も聞こえる銅鑼声の連発には、まったく応じていない感じ。心配顔をしている友美のジョッキに、ビールをジョボジョボと継ぎ足していた。

 

 だが、和布刈以上の楽天家が、ここにいた。それもひとりではなく四人。

 

「なんやぁーーっ! 人がせっかく楽しゅう酒ば飲みようときにぃ!」

 

「場の空気ば壊すんやなかぁーーっ!」

 

 孝江と孝乃を先頭にして、元孝治たち四人が、一気に立ち上がったのだ。

 

 しかも四人とも、見事に瞳が据わっていた。

 

「げっ! やばいっ!」

 

 涼子が一瞬にして、顔を青ざめさせた。

 

「いったいどうしたの!? 涼子ちゃん!」

 

 友美も半分青い顔になって尋ねると、涼子は慌てている口調で答えた。

 

「おにい……お姉ちゃんたち、実はあんまり、お酒に強うなかったとですよ☢ それがきょうはいい気になって、四人そろってけっこう飲んでたみたい 注意せんといけんかったあたしも、思いっきり迂闊やったわぁ


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