『剣遊記超現代編T』 第二章 男一名イコール美女四名? (12) 「シャワーしよっと☞」
一番初めに治花が、湯船からバシャッと立ち上がった。
「「「じゃあ、あたしも♪」」」
付和雷同で、残りの三人も、あとに続いた。
「あたしも☺」
涼子もいっしょについてきた。
シャワールームは大型浴槽の隣りの浴室にあり、何人かの先客たちがいた。それでも大型のスーパー銭湯なだけあって、人数的には、まだまだ充分な余裕があった。
元孝治たち四人と涼子はそれぞれ片手にタオルを持ったまま、当たり前ながら真っ裸の格好で、シャワールームへと向かった。
「うわっち?」
そこで最初に孝乃は気づいたのだけど、いつの間にか自分たちの周りには、大勢の子供たちが集まり始めていた。
一番初めに記したとおり、女湯は子供連れで入る場合が多いので、ある意味幼稚園的な雰囲気も見受けられる浴場といえた。そのためかやはり、元孝治たちの四つ並んだ同じ顔がおもしろいのだろう。多くの幼児たち――それも男女半々がキャッキャッと騒いで、元孝治たち四人と涼子のあとを追い駆けてくるのだ。
当然ながら、最初に銭湯に入ったときから言われているのだが、四人のまったく同じ顔付きについて、子供たちからいろいろな質問を受ける話の展開となった。
「おねえちゃん!」
「「「「うわっち! な、なんね……なんですか?」」」」
さすがに初めて声をかけられたときは、四人そろって心臓がドキッとしたものだった。しかも質問者は、五歳くらいの男の子。その子が周りのちびっ子たちを代表してか、実に基本的な問いを発してくれた。
「おねえちゃんたちは、どうしてそんなにおんなじ顔なの?」
この程度の質問であれば、解答は先ほどと同じで充分と言えた。こちらも代表して、孝江が答えた。
「はは……これはさっきも言ったっちゃけど、おれ……あたしたち四つ子なの☻ やけんこげんそっくりに生まれてきたっちゃよ♣♠」
続いて男の子の左隣りにいるポニーテールの女の子から。年はやはり、五歳くらいみたい。
「おねえちゃんたち、なにかテレビに出たりしてる? なんだかAKBさんたちみたい♡♡♡」
こちらはこちらで、芸能界への憧れを抱いているようだ。現に双子のユニットなどは、昔からアイドルの定番でもあるし。
「う〜ん、お姉ちゃんも一応、ふつうとは違う仕事に就いとるけどねぇ☺」
治代はニッコリ顔で答えてやったが、それでも『漫画家です✌』とは言わないようにした。出版社の編集部から止められているのだが、人気漫画家の立場上、あまり人前に身分を明かさないほうが良い――と言う方針らしいので。
「ふつうとちがうしごとって、なに?」
もちろんそれだけで、女の子が納得するはずもなし。さらに突っ込んだ質問を繰り返すけど、元孝治たち四人はこれくらいの疑問であれば、ある種の解答慣れをすでにしていた。
今度は代わって、孝乃が答えた。
「みんなに夢ばプレゼントする仕事っちゅうたら、ええやろっかねぇ☺♪ みんなも大きくなったら、いつか夢見る職業ばいね✌」
「ふぅ〜〜ん、夢なのぉ〜〜☺」
「じゃあ、質問タイムはこれにてね♡」
女の子はまだまだ訊いてみたい質問がたくさんあるようだけど、元孝治たち四人は最後の解答者である孝乃が先頭で手を振って、一目散でシャワールームへと駆け込んだ。
それでもついて来る幼児たちを、邪険にするようなことだけは、絶対厳禁にしていた。しかしそうなると、なぜかつけ上がるのが、幼い子供たちの悪い癖とでも言うべきであろうか。 (C)2017 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |